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第46話 明隆視点 朝から甘い

 俺が同じ高校の映画研究部にいた「後輩」だったって教えた。貴方を追いかけて、今、ここにいるって。  貴方のことがずっと好きだったって。  すごくびっくりしてた。  ーーあ、ぃや、だから、どうしてそんなに上手なのかなぁって。  童貞なのに、麻幌先輩が初めてなのに、上手いのはなんで、だって。誰と練習してた? って。  やだよ。教えたくない。  教わるわけないじゃん。したくない人としたって、相手が貴方じゃないなら意味ないでしょ。俺がしたいの貴方だけだし。貴方が気持ち良くなってくれる方法が知りたいだけなんだ。  上手いかどうかなんて知らない。他を知らないし、知る必要ない。  ――ちょ、なんでっ?  慌てなくても、貴方としかしてないよ。  言いたくないのは、笑えるくらいにダサいから。  なんも知らない、キスも何もかも未経験だった陰キャが、高嶺の花とのチャンスなんてあるかもわからないのに、必死にイメトレと知識だけネットから収集して詰め込んで、覚えたなんて。  カッコ悪すぎて絶対に教えたくない。 「……んー……」  寝顔、キレー……。  頬に触れると柔らかかった。  この柔らかい唇で、俺のこと、アキくんって、呼んでくれた。  本当に、俺が、この人の隣にいる。  信じられるか? あの人に、今、触ってる。  髪に触れて、キスもできる。  嘘、みたいだけど。 「? ン、アキくん?」  嘘、じゃない。 「今日は……大学、何時、から?」 「……今日は休み」 「んなわけ、ないデショ。映像科は一番、スケジュール詰まってる、とこ……なんだから」 「……」 「おい……知らんぷりする、な……」  まだ寝ぼけながら、麻幌先輩が頭を擦り付けるように懐に入ってくる。自分のいた学科だからよく知ってる。そう、映像科はメインになるような学科だから、課題も多ければ、講義も結構詰まってる。他の大学みたいにさ、のんびりしてられる大学生とは違って、長い休暇期間になれば、課題がしっかり出されて、それにかなりの時間を費やすことになる。休暇どころか、課題をやるための時間を与えられたって感じに。 「……本当は?」  寝ぼけて、目を瞑ったまま、うつらうつらしながら、ぎゅっと俺にしがみついてくれた。  寝起きの麻幌先輩の声が掠れてた。寝起きはそんなに悪いほうじゃないけど、昨日、散々、抱いたから。声が枯れ気味なんだ。 「朝からだけど、まだ平気」  昨日のこの人は感度、すごかったから。  自分の甘い声に真っ赤になって狼狽えてた。どうしても溢れるその声をキュッと唇を結んで、堪えるから、もっと聞きたいって、キスで開かせながら、奥を――。  ――あっ、アキくんっ、そこ、らめっ。  最後のほう舌ったらずだったのが、堪らなく可愛くて。  ――ン、好きっ。  そう何度も言ってくれるのが、嬉しくて。 「ん……っ、? アキ、くン……」  俺って、絶倫、なのかな。 「やぁ……ン」  肩にキスしただけで溢れた甘い声に、スイッチを押された。 「あ、ン……アキくんっ」 「ね、麻幌さん」 「あっ」 「キスマ、消えちゃったから付けていい?」 「あ……ン」  一週間前に付けた、限定期間だけでも俺だけの先輩にする印。この印のある間だけは、俺が貴方のことを抱いていいって印、だったけど。 「……フ、ぁっ……あ、ンっ」  ちょっとまだ寝ぼけてる貴方の首筋にキスをしたら、くすぐったいのか、ちょっとだけ笑って、それから素足を絡めてくれる。  さらりとした肌触りで、温かくて、柔らかい太腿の内側に擦り寄られると、朝から、ヤバいくらいに、身体が火照り出す。 「ン……付けて……」  まだ、寝ぼけてる? 夢だと思ってる? そんな無防備に身体を開いたらダメだよ。  ねぇ、麻幌さん。 「あっ……ン」  元陰キャで、貴方に触れることだけ考えてイメトレばっかしてた、童貞なんだから。 「あンっ、あっ、乳首っ」  覆い被さって、昨日の名残で色づいてる胸の赤色にキスをした。 「ン……」  うっとりと目を瞑ったままの麻幌さんの唇から、甘くてとろけた吐息が溢れる。  背中を逸せて、白い喉元を晒しながら、細い腰を浮かせてる。昨日、散々引き寄せて、抱き締めた身体は折れそうなくらいに細いのに。 「気持ちい……アキくんのキス」  童貞を、あんま煽らない方がいいよ。 「やぁ……ン……ン」  深く舌を絡めてキスをしたら、布団の中で、麻幌さんが脚を開いて、手を伸ばしてくれる。 「アキくん」  そんな甘い声で名前呼ばない方がいいよ。 「あっ……」 「まだ、ここ柔らかい」 「あっ、あっ、指、入っちゃうっ」  ――こ、ここんなところに挿入……って。え、えぇ……入る? の?  ネットで知った男同士のセックスの仕方に最初、驚いたっけ。  ――麻幌先輩華奢だから、大事にしないと、だ。  期末考査そっちのけでやり方だけ覚えたりして。 「あ、アキくんっ」  でも、実際に貴方としたら、ネットの知識なんて、一瞬で消し飛んだ。  甘い声は、耳元で囁かれると、目眩がした。  白い肌は指に吸い付くような気がして、ずっと触ってた。  しがみつく細い腕が嬉しくて。その腕の内側、柔らかい部分にキスをした。  舌の柔らかさと濡れるキスに、腰の辺りが重くダルくなったりして。  しゃぶりつかれると、口の中の熱さに頭の中が真っ白になる。  そして、貴方の中のたまらない窮屈さと、頭が真っ白になりそうな快楽は――。 「あ、あぁっ……あ、ン、大っき……あぁっ」  貴方の身体と繋げる快楽は。 「あ、アキくん、好き」 「っ」 「大、好きっ」  何より最高で。 「俺も」  ――麻幌先輩と……かぁ……。  そう貴方のことで頭の中をいっぱいにしてたあの頃よりもずっと。 「すごい好き」  貴方のことが好きでたまらない。

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