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第62話 癒しタイム

 ヘットヘトに疲れてた。  適応力ってあるほうだと思う。倉庫でのピッキングとか箱ごとにやるバーコード読み取りとかは、けっこう慣れてきててさ。「疲れ」そのものにも慣れてきた。このバーコード読み取りも、パッと聞いただけだと楽そうだけど、そんなことないんだよ。重たいし、たまに指の握力がゼロになるし。どんな仕事も大変だなぁって思いながら、色々、ない知恵振り絞って頑張ってる。  けど、配送はほんともう体力勝負っていうか。不慣れな「疲れ」っていうか。 「麻幌さん、こっち来て」  そう言いながら、アキくんがベッドの端をポンポンって手で叩いた。 「えぇ? いいよ。そのくらい自分でする」 「ダメ。ほら、早く」  もう今日は体力ゲージ本当にゼロですっ! って、思った。  このまま寝ちゃいたい。  お風呂に入るのだってしんどい! って思ったのに。  ご飯もさ、正直、食欲なかったんだよね。  多分、一人だったら、汚い話だけど、お風呂も入らずこのままベッドに転がったまま寝てたと思う。朝になってバッキバキに凝り固まった身体にぼやきながら、お風呂にも入らないで寝たことに自分自身呆れながら、仕方なくお風呂入って、適当に何かお腹の中に食べ物入れてたんじゃないかな。  けど――。 「……はい、髪乾かすの完了」  一日走り回って汗でベトベトだった身体も、埃っぽかった髪も、綺麗さっぱり。  お風呂入るとさ、少しだけだけど、疲れも一緒にお湯で流れてく気がしない? お風呂入る前より確実に元気なんだけど。  ご飯も美味しかった。豚丼、おかわりしたいくらいでさ。アキくんよりもずっと早くに食べ終わっちゃってた。あまりに早く食べ終わっちゃったから、アキくんが自分の分も分けてくれようとするくらい。もちろん、大丈夫って言ったけど。でも、一口もらっちゃった。  豚肉は疲労回復にいいんだそうです。肉体改造のために食事にも気を使ってたアキくんが教えてくれた。 「はい。次、ボディローション塗りつつマッサージ」 「えぇ? それはいいってば」 「いいから、ほら」  ご飯作ってもらって、お風呂も洗って、沸かしてもらって、入るだけにしてもらって。髪、乾かしてもらっちゃって。スキンケアまで。  いつもお風呂上がりに塗ってるやつ。自室でお風呂上がった時は必ず塗ってる。一応さ、考えてるわけです。抱きたくなる身体作り? みたいな? 「これでしょ? 足だして」 「……はーい」  アキくんが俺に触れた時、少しでも気持ちいいって思ってくれるように。  アキくんが俺を抱きしめてくれた時、少しでもいい香りがするって思ってくれるように。  そしたら、もっと触ってもらえるでしょ? 「足、塗ってくね」  もっと抱きたいって思ってもらえるでしょ? 「っ」  大きな手がとろりとしたボディローションをまとって、肌を滑ってく。  気持ちぃ。 「今度は反対の足」 「ン」  ゾクゾクしちゃう。 「これ、いい匂いだね」 「そ?」 「麻幌さんを抱きしめる時、少しだけ香るやつ」  不思議。毎日、自分で塗ってる時は全然、気持ちいいとかないのにさ。 「あっ……ン」  アキくんの手に塗ってもらえると、たまらなく気持ちいい。 「そんな足の付け根にばっか、スケベ……」 「下心混みで塗ってる」 「っぷ、何それ」  柔らかい太腿の内側にローションを塗られて、お腹の奥がキュッてした。 「上半身は? 塗る?」 「ぅ、ン」 「おけ」  魔法の手。 「あっ」  その手が服の中に入ってくるだけで、ドキドキして、嬉しくなる。Tシャツの中に潜り込んだ手がお腹を撫でてくれるだけで、キュンってしてさ。しっとりとしてく肌と一緒に気持ちもしっとり濡れてく気がする。 「あン」  お腹に塗ってもらえて。  期待しちゃってた胸をその手が撫でた瞬間甘い声が溢れた。 「ぁっ、あっ」  ローションで滑りの良くなった指先にコリコリ硬くなった乳首の周りを撫でられると、切なくなってくる。  ねぇ、そこ触ってよって、勝手に身体が甘い刺激を欲しがって、その手に、その指に、自分から乳首を擦り付けてく。 「あっ、あっ」 「乳首、も塗って欲しい?」 「ぅ、ン、塗って」  撫でて。摘んで。 「おけ……」 「あっ、アンっ、っン」  可愛がって。 「こっちも、塗って」  疲れてた、んだっけ? 俺。もう体力ゲージゼロで、このまま寝ちゃいたいって思ってなかったっけ? 「あ、あ、あっ、気持ち、ぃ……アキくんの指っ」  もう全然、疲れなんて消えちゃった。何十キロって両手両足にぶら下がってた重しはどこかに消えてた。 「背中も塗る?」 「ぅ……ン」  言いながら、さっき履いたばっかのルームパンツと下着を一緒くたに引っ張り下げられた。 「あっ」 「なんか、腰、また細くなった気がする」 「あ、ン……そ、んなことないって」  大きな手に腰をしっかり持たれると胸が高鳴って。 「折れそう」 「あっ折れ、ないっ」  腰から背中、そのまま下へ。 「こっちは違うローション」 「あっ」 「塗ってっていい?」  コクコク頷いて、その楽しそうに笑ってる唇にキスをした。 「早く……」  甘くて、とろけて、舌同士がたっぷり絡まり合うやらしいキス。 「中に、塗って」  言いながら、アキくんの指が入りやすいように、大胆に脚を広げた。

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