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再会?③
渉が在籍するのは、成績上位数%の生徒だけが選ばれる『特別進学コース』だ。成績だけではない、運動もできなくてはならないし、生徒会活動等にも積極的に参加する必要がある。
このクラスの生徒達は、超有名大学へと進学していき、医者や弁護士といった職業で活躍する者がほとんどだ。
渉は入学前に受けた試験でこのクラスの在籍が決定したのだが、幸か不幸か特別進学コースには正悟もいる。近くにいる分、彼を観察することはできるのだが、彼が仁の生まれ変わりではなく他人の空似だった場合、一緒にいて気持ちのいいものではない。
あんなに楽しみにしていた高校生活だったにもかかわらず、最悪なスタートを切ってしまったことが渉は悲しかった。
初めての教室に案内された渉は、少人数ではあるがクラスメイトの前で自己紹介をした。名前を言って丁寧に頭を下げると女子生徒たちから溜息が漏れる。
「桐谷君ってめっちゃかっこいい。芸能人みたい」
「かっこいいっていうより可愛い系だよ。あたし、超タイプ」
「あの容姿で、桐谷財閥の令息でありアルファでしょう? お付き合いしたいなぁ」
女子生徒が瞳をキラキラと輝かせる中、男子生徒は品定めをするような視線を渉に向けた。アルファの割に中性的な雰囲気をもつ渉は、同性からも恋愛対象として見られることも度々ある。
そのため、同性からの舐めるような視線にも慣れている渉は、視線の色が様々に色めく中でも、顔色ひとつ変えずに立っていられた。
「じゃあ、桐谷はあそこの席だ。西野、いろいろ面倒を見てやってくれ」
担任の教師が指さしたのは窓際の一番後ろの席。温かな春の日差しがさんさんと降り注ぐ席だ。
クラスメイトから向けられる好奇の視線から逃げるように、渉は一番後ろの席に腰を下ろした。
――あぁ、これだけで疲れた。
そう胸を撫で下ろしたのも束の間、隣の席にいた生徒に肩を叩かれる。「はぁ……」と心の中で大きな溜息をつきながら視線を向ければ、にっこりと微笑む正悟がいた。
「改めてよろしくね、桐谷君。わからないことがあったら遠慮なく聞いてね?」
「う、うん。ありがとう」
渉はそう言ってから俯いた。
――君は仁さんの生まれ変わりなの?
無邪気な笑顔を向けてくる正悟に問いかけてみたかったが……そんなことを聞いたら頭のおかしいやつだと思われてしまうことだろう。
「こっちはわからないことだらけだよ……」
渉は膝の上で拳をギュッと握り締める。
こうして夢にまで見た渉の高校生活は、妙な形で幕を開けたのだった。
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