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再会?⑥
「もしかして、今からお弁当食べるところだった?」
「……うん」
「ごめんね、お邪魔しちゃって……って、え? もしかしてこれ全部ひとりで食べるの? これじゃあ正月のおせち料理じゃん!」
「やっぱりそう見えるよな。今日初めて登校する日だったから、料理長が張り切っちゃったのかも」
広げられた弁当を見て、渉は溜息をつく。どう見たってひとりで食べられる量なんかではない。
「じゃあさ、僕も食べていい?」
「え? 西野君も?」
「そう。実はさっきのトラブルで昼飯買い損ねちゃったんだよね……。だから昼飯諦めてたとこだったんだけど。……あ、図々しいお願いしちゃってごめんね。無理にとは言わないから……!」
顔の前で両手を振っている。余程慌てているのだろうか? 首筋まで真っ赤になっている。そんな仕草まで仁にそっくりだ。悔しいくらい似ていて、嫌になってくる。
「いいよ。一緒に食べよう? って言うか、俺一人じゃ食べきれそうになかったからむしろ助かる」
「本当に? ありがとう」
無邪気に笑う正悟を見る度に胸がチクンと痛む。だけど、もっと正悟の笑う姿が見たい……。そう思ってしまう渉もいた。
「いただきます!」
渉が手渡した箸で、正悟が唐揚げを掴もうとかがんだ瞬間、さらさらと正悟の髪が揺れる。そして渉は、あるものを見つけてしまった。
それは普段髪に隠れて見えない場所にある黒子。仁は左耳の後ろに二つ並んだ黒子があった。そして、今目の前にいる正悟にも仁と同じ場所に黒子が……これは偶然なのだろうか?
そしてもう一つ、渉には気になることがある。それは正悟の『八重歯』だ。仁には『鬼歯』と呼ばれる大きな八重歯が二つあった。ニッコリ微笑むとその八重歯がチラッと顔を出し、可愛らしかったのをはっきり覚えている。
今、渉の目の前で唐揚げを口いっぱいに頬張る正悟にも『鬼歯』がある。しかし仁には二つあった鬼歯が、正悟には右側にひとつしかない。それを見れば、やはり仁と正悟は別人なのだろうか……と思わず考えてしまう。
あっという間に弁当のほとんどを平らげてくれた正悟。それは見ていて気持ちいいぐらいの食べっぷりだった。
「ご馳走様。美味しかった」
満足そうに笑う正悟を見ながら、やっぱりこの人は仁さんなのだろうか……いや、でも……と、渉の考えは振り出しに戻ってしまった。
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