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カルガモの親子⑦

『はぁはぁ、宗一郎、可愛い、可愛い』 『痛い、仁さん待って、待って』 『馬鹿を言うな、待てるはずがないだろう』  荒々しく浴衣を脱がされて、縁側に押し倒される。未だに仁に抱かれることに慣れない宗一郎は、ギュッと目を瞑った。  普段は優しく穏やかな仁なのに、ヒートした宗一郎を抱く時だけ、まるで獣のような姿に変貌してしまう。肩で呼吸を繰り返し、まるで獲物を舐めるかのように全身を熱い舌で舐め回される。  愛撫をする手にも力がこもり、痛いほどだった。それなのに……そのあまりの雄らしい姿に欲情してしまう自分がいる。  ドンドンッ。  暗闇に大輪の花が開く。鮮やかに夜空を飾る花火が、仁の裸体をも美しく照らし出した。そのあまりの美しさに、自分のヒートがいっそう高まっていくのを感じる。体が熱くて、アルファに抱かれたいと本能的に願ってしまう。 『なんて綺麗なんだろう』  そっと仁の首に腕を回して口づけをねだる。早く、仁の温もりを感じたかった。 『あんまり煽るな。歯止めが利かなくなる。お前に怪我をさせてしまったらどうするんだ?』 『別にいい。だって、だって……はやく仁さんが欲しい』 『可愛いな、宗一郎』 『早く、早く仁さん……仁さんが欲しい……』  ギュッと抱きつけば、それ以上の力で抱き締め返してくれる。ドンドンッと花火が打ち上げられる度に、欲情していく自分を感じる。そしてそんな自分のフェロモンに充てられてラットしていく仁が、たまらなく愛おしい。 『いつか、宗一郎と番いたい』 『俺も、仁さんに項を噛まれたい。いつか、きっといつか……』  優しく微笑みながら自分に覆い被さる仁に足を絡ませ、二人は甘美な世界へと堕落していったのだった。 「……たる、渉! どうした?」 「え、あ? な、な、なんでもない!」  突然正悟が自分の顔を覗き込んできたものだから、飛び跳ねるほどびっくりしてしまった。  今の今まで正悟とそっくりな人物と卑猥なことをしていた思い出に浸っていた渉は、恥ずかしさと罪悪感に襲われて、消えてしまいたい衝動に駆られる。  ――いくら仁さんと、とは言え……ごめん、正悟。  心の中でそっと謝罪した。

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