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歪んだ真実⑥
「言っただろう? 運命は作り変えられる。過去にも俺は運命を変えようとした。あの時、仁と宗一郎の関係を当主に言いつけ、お前たちを引き裂いたのは誠……つまりこの俺だ」
「は?」
「次期当主と使用人のふしだらな関係に激昂した当主は、案の定、仁にすぐに婚約者を見つけてきた。それが俺の思惑だとも知らずな」
喉の奥でククッと笑う慧に、渉は身震いするほどの怒りを覚えた。
「そして怒りの収まらない当主を、更にこうそそのかしたんだ。次期当主を誘惑した、あの淫乱なオメガは俺が引き受けます、ってな」
「なんだって?」
「全ては俺の作戦通りに事が進んだ。面白いくらいにな」
「……あんたは一体何を言いたいんだよ?」
「だから、全てはお前を手に入れるために俺が仕組んだことだったんだ」
片方の口角を上げ、気味の悪い笑みを浮かべる慧が、渉の顎を掴み自分の方を向かせる。渉は慧を睨みつけることしかできなくて……あまりにも無力な自分が情けなくなった。
なんてオメガとは弱い生き物なのだろうか?
「お前たちの関係を公にすることで仁に妻を娶らせる。そして傷ついたお前を、俺の嫁にする……完璧なシナリオのはずだった。だが途中まで上手くいっていたのに、計算外だったのは、お前達二人が仲良く心中なんてしちまったことだ」
「なんだと……」
「あと一歩のところで、俺はお前を手に入れ損ねたんだ」
「…………!?」
ザワザワと全身の毛が逆立ち、煮えたぎるように血液が沸騰していく感覚。今までに感じたことのない強い怒りが、冷静な考えを消し去っていった。
「まぁ今回も、お前が別のアルファに項を噛まれたというハプニングが起きたが、それは今の時代どうにでもなることだ」
「なぁ、この項の傷は誰がつけたんだ? もしかしたら……」
「残念ながら、あの正悟という男がつけたものでもないよ」
「じゃあ、一体誰が……」
「それは秘密だよ、永遠にね。これからお前は、一生薬でヒートをコントロールされて、俺の番として生きていくんだ」
「薬で、コントロール?」
「そうだ。明治時代より医療は目覚ましく進化を遂げている。オメガのヒートだって簡単にコントロールできる時代になった。だからお前は、俺の番として生きていくことが今世の運命なんだよ」
「そんな……」
「お前を一生大切にする」
怒りから渉の目頭が熱くなる。体が震えて呼吸がどんどん荒くなる。心臓が爆発してしまいそうだ。
――この男が、宗一郎と仁を引き裂いたのか? あんなに想い合っていた二人を……。
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