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過去の記憶⑤
「はぁ、はぁ……。正悟、体が熱い……。早く、早く来て……」
「待って、渉。そんなにフェロモンを出さないで。加減できなくなるから」
「だってぇ……」
渉と正悟は屋敷の玄関に辿り着いた瞬間、口付けを交わす。早く抱き合いたいと気持ちが競って仕方がない。もつれるように部屋へと転がり込み、濡れた洋服を脱ぎ捨てた。
「はぁ、あ、ん……はぁ……」
正悟の口付けはどんどん深くなっていき、呼吸をする暇さえない。酸素を求めて正悟の唇から逃げ出しても、すぐに捕らえられてしまう。渉は息が苦しくて、必死に肩で呼吸をした。
正悟に組み敷かれた渉は大きく足を開かされ、体を隠す物なんて何もない。それでも恥ずかしいなどと感じる間もないくらい、お互いを激しく求めあった。
「渉、可愛い。可愛い、渉……。可愛い……」
耳元で呪文のように繰り返される言葉に、渉の体がどんどん熱を帯びていく。裸で抱き合うと、火照る正悟の素肌が吸い付いてくるようで気持ちがいい。
触れ合う胸から、正悟の雷のような心臓の音が聞こえてくる。
オメガとアルファが愛し合うって、こんなに激しいのか……。
まるで獣のように自分を求めてくる正悟の体に、渉は無我夢中でしがみついた。
恐怖から体が小さく震える。こんなにもラットしたアルファに抱かれたら自分はどうなってしまうのだろうか。しかし、それ以上に好奇心が勝ってしまう。
――正悟にめちゃくちゃに抱かれたい。
オメガの本能が疼いて、渉はどんどん欲情していった。
「俺、オメガを抱くのは初めてだ。ねぇ、オメガってこんなにも愛おしい存在なんだね」
「正悟、俺……んッ、あ、あぅ」
体中を這い回る正悟の熱い舌に、全身が歓喜の悲鳴を上げる。胸の小さな飾りを舌先で虐められるだけで、嬌声をおさえることなんてできない。
フェロモンがどんどん濃くなり、部屋中に広がっていくのを感じた。
「渉の中に入っていい? 俺、もう我慢できない」
「俺も、俺ももう我慢できない。きて、きて……正悟。ん、ぁあッ、あぁ……ッ!」
「なんだこれ、すげぇ気持ちいい……」
ズンと体を引き裂かれるような感覚に、目の前に火花が散る。渉は強い衝撃に思わず体に力を籠めた。
正悟自身は、渉の想像以上に熱い鉄槌のようだ。はじめのうちは違和感を覚えたが、すぐに体に馴染んでいくように感じられる。
渉は正悟に抱かれるのは初めてだったが、体は正悟のことを覚えているように感じられた。
――こんな感じだったっけ……。
まだまだ余裕のない渉は、正悟の背中に爪をたてる。「ちょっと待って」そう言おうとしたけれど、それはどうやら叶いそうもない。
ラットした正悟には余裕などあるはずもないのだろう。熱い吐息を吐き出した後、小さく身震いをした。
「渉の中、トロトロしてて温かくて気持ちいい。吸い付いてくるみたいだ。ごめん、優しくなんてできないかも。渉、動くよ」
「あ、あん、う……ッ。正悟……正悟……」
「痛かったら言って、善処する、から……」
「いい……。ひどくしていいから抱いて。ねぇ、もっと深く繋がりたい」
「だから、あんまり煽らないでって……」
「あ、ぅ、あぁ……ッ!」
結ばれた部分からは温かな体液が溢れ出し、渉の太腿をツーッと伝っていく。正悟が少し体を動かすだけで、卑猥な水音が静かな空間に響き渡る。恥ずかしさのあまり、渉の目に涙が溜まり静かに頬を流れ落ちた。
――でも、気持ちいい、気持ちいい……。
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