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過去の記憶⑥
正悟がゆるゆると腰を動かす度に、快感の波が押し寄せてくる。その感覚にブルッと身震いをしてから、自ら正悟に口付けた。
「ヤバイ……好きな子と抱き合うって、こんなに気持ちいいのか……。あぁッ、気持ちいい……。もうイキそう……」
「正悟……」
「気持ちいい、渉、気持ちいい……!」
自分に腰を打ち付けながら熱い吐息を吐く正悟の姿に、渉は更に欲情を駆り立てられる。
「渉も気持ちいい?」
「うん。すごく気持ちいい……」
「よかった」
渉は正悟の体を抱き締める。
時を越えて、また愛し合えたことが嬉しくて、幾筋も涙が頬を伝った。
「好きだ、好き。渉、愛している……」
「俺も、俺も正悟を愛しているよ。あ、あぁ、んッ……!」
体の中を擦られていく感覚に、渉はいとも簡単に絶頂へと追いやられてしまう。正悟が腰を打ち付ける度に、自らのお腹に白濁を撒き散らした。
「それに渉、いい匂い。この匂いは、僕だけのものだ」
そう耳打ちされるだけで、軽く果ててしまう気がする。頭がボーッとして、思考がまとまらない。
ただ、目の前にいるアルファが愛おしくて心が熱くなる。
狂おしい程の幸せを感じた渉の目からは、大粒の涙が溢れ出した。
「あ、あッ。はぁ……渉、気持ちいいね」
「あ、はぁ、んッ……気持ちいい。もっと、もっと奥まできて……。足りない、足りないよぉ……!」
「だからぁ、あんまり煽らないでって。渉、この体で抱かれるのは初めてなんだから。本当に、僕、渉を壊しちゃうよ」
「いい、いいから……壊れてもいいから……」
「駄目だよ……」
「んん、あ、はぁ……」
「うん、気持ちいいね、渉。ずっとこうやって繋がっていたい」
結ばれながらのキスは苦しくて、唾液と涙で顔なんてグチャグチャだ。それでも正悟は「可愛い」と何度も言ってくれた。
「渉、項、噛んでもいい?」
「噛んで、正悟、ねぇ、噛んで……」
「本当に? 後悔しない?」
「しない。するもんか。何年正悟に恋をしてきたと思ってんだよ」
「うん。そうだね。ごめんね、ずっと待たせて」
目の前の正悟が大きく息を吸ってから吐き出す。その瞬間、鬼歯が姿を現した。
「ちょっとだけ我慢してね。渉、怖い?」
「うん。少しだけ……」
「大丈夫だよ、優しく噛むから。だから、怖くなんてない」
「あッ! あ、あぅ、あぁッ!」
首筋に感じる肌を切り裂く鋭い痛みと、温かな血が流れ出す感覚に確かな幸せを感じることができた。
「今世では絶対に幸せになれる。ずっとずっと一緒にいられる」
正悟の声が、鼓膜の奥に響き渡る。
「渉、愛している。もう離さない」
「しょう……ご……」
ドクンという拍動と共に、正悟が小さく悲鳴をあげた。正悟の体がビクンビクンと震えるごとに、温かなものが渉の体内へと広がっていくの感じる。その感覚に、渉は無意識に身震いをした。
「これからは、ずっと一緒だ」
もう一度確かめるように正悟が呟いた。渉はそんな正悟を抱き締める。もう離れることがないように……。
池の隅でひっそりと咲く蓮の花が、そんな二人をそっと見守っていた。
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