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高貴な瑠璃は散らされる(6)
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──公会議除名処分を検討している。申し開きがあれば個人的に聞く。登城せよ。
早朝の新鮮な空気を吸う間もなく、じいやに叩き起こされたレオンハルトは王の使いが持参したという書状に色を失った。
急いで服を着替え、じいやと共に庭へ出る。
震える手で馬具を用意していると、今度はばあやが転がるように走ってきた。
「どうしましょう。エドガー坊ちゃんがいません」
「エドガーが? そんな……夕べ、鍵をかけたはずなのに」
朝食を持っていったら鍵はすでに開いていたという。
当然というべきか、室内にエドガーの姿はなかった。
簡単な鍵だ。
内側から強引に扉を押すと壊れてしまうのかもしれない。
ちゃんと部屋の前で見張っておくんだったと悔やむがもう遅い。
このとき脳裏に浮かんだのはシンシアの姿だ。
ヴィルターに連れられ、打ちひしがれた様子の昨夜の後姿が蘇る。
「エドガーのやつ、またシンシアを連れ出そうとしてるんじゃ……?」
いや、待て。
それならヴィルターから連絡があるはずだ。
それともシュルツ家ではシンシアが姿を消したことにまだ気付いていないのだろうか。
あるいは、今まさに使いが馬を走らせてこちらに向かっているところなのかもしれない。
どちらにしろ、こんなときにまず相談したいヴィルターはここにはいない。
「……陛下の呼び出しが最優先だ。俺は出かける」
馬に飛び乗ったレオンハルトは、己の頬が滴に濡れていることに気付いた。
まさか泣いて──?
己の弱さに慄くしかない。
ほどなくして頬を、額を、手をポツポツと濡らす水滴が雨であることが分かった。
雨具を用意しますねと家の中へ戻ろうとするじいやを馬上から引き止める。
今は時間が惜しい。
少しでも早くルーカス王の元へ参上しなくては。
「雨の中で悪いが、じいやはエドガーを探しに行ってくれないか。街の酒場にいるかもしれない。ばあやは風呂を沸かしておいてくれ。エドガーが雨で凍えているかもしれないから。それからあたたかいスープを作っていてくれないか。あいつが戻ったら飲ませてやってほしい」
戸惑いながらも頷く老夫婦に、ばあやのスープは絶品だからなと笑いかけてから、レオンハルトは馬を走らせた。
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