40 / 94

「愛」のおもいで(5)

 あのころは姻戚関係という間柄で満足していたとヴィルターは続けた。  口調は静かだが、抗えぬ覚悟がそこにはある。 「今は違う。レオ、おれは君を恋人だと思ってる。決して離れない。君がこの手を血に染める覚悟なら、おれが楯になろう」 「ヴィル……」  恋人なんて歯の浮くようなことをよく言えたものだと、レオンハルトは苦笑する。  何を言っても駄目だ。もう俺に関わるな──そう言って、ヴィルターの手を振り払おう。  しかし一瞬触れた手の冷たさに、決意はあえなく砕けた。 「……俺はもう独りぼっちだと思っていた」  頬を挟む手に、そっと手のひらを重ねる。 「ルーカス王に地獄を見せてやる。あの男を王座から引きずりおろす」  もう穏やかな日々には戻れない。  この国の最高権力者に歯向かえば、地獄に落とされるのはこちら側なのかもしれないのだ。 「それなら、おれもレオと一緒に地獄へ落ちよう」 「ヴィル……」  頬をなでるヴィルターの手が、再びこぼれた透明な滴をそっと拭う。  吐息が唇に触れた。  孤独を享受するという決意はあえなく崩れ、迫る緋色の眼差しにレオンハルトはついに囚われてしまう。 「ヴィ……んっ……」  重ねた唇を思いきり吸われ、互いに求め合うように舌を絡めあう。  何度も深く唇をあわせると、貪るように口中を犯された。 「ヴィル、早く……。俺のなかをヴィルでいっぱいにしてくれ」  密着した身体をさらに押しつけると、ヴィルターはよろけるように椅子に座り込んだ。  唇を離したくない。  キスしたまま、二人はもどかしく互いの服を剥ぎ取る。 「ヴィル、ヴィル……はやく……」  ベッドに行きたいなんて、ねだる余裕はなかった。今すぐほしい。  台所の堅い椅子にヴィルターを座らせ、レオンハルトはその上に腰を落とす。 「レオのここ、ドロドロだ……」  下着を剥がれ、冷やりと冷たい指に先端を弄われる。  膨張したその場所は、涙のようにトロトロと滴を零していた。  触れられただけで腰が跳ねる。 「だめ……そこ触っちゃ駄目だ、ヴィル。気持ちよくなる……」 「なんで? 気持ち好くなってよ」  だめ、だめ……と喘ぎながら、レオンハルトはヴィルターの首に腕を回した。  頬をすりすりと重ねると、耳たぶを唇で食む。 「ナカで気持ち良くしてくれ、ヴィル」 「レオ……っ」  腹にあたるヴィルターのものが一気に固く膨れあがった。  もどかしげに前をはだけると、ヴィルターは両手でレオンハルトの尻を持ち上げる。  ひくひくと震えてねだる後孔に自らの先端をあてると、そのまま前後に揺すりだした。  性感帯になりつつあるそこにぬるぬると精液を塗りつけられ、レオンハルトの喉からはしたない喘ぎが漏れる。 「ヴィル、ヴィル……はやく……んっ」  嬌声を封じるように唇を奪われた。  口の中にぬるりと侵入する舌が内部を蹂躙する。

ともだちにシェアしよう!