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「愛」のおもいで(8)

「レオはおれのものだし、おれはレオのものだ。おれたちは他に何もいらない。なぁ、そうだろ?」  歪んだ感情かもしれない。  だが、この男に所有のしるしを刻まれるのは心地好かった。  強く痕をつけられるたびレオンハルトの腰は跳ね、ヴィルターの服をしとどに汚す。 「ヴィル……ぅ、だからっ、王にはぜったい……何か秘密が……っ」  公会議議員である商人たちの財力と、ダグを筆頭とした《王の影》という実行部隊の存在のため、誰もルーカス王には逆らえないのが実情だ。  代替わりの際、何が起こったのか疑問に思う者すらいない。  調べようにも、当時の議員らは王宮を去っている。  元々、公会議議員とは経験豊富な貴族が務めていた役職だ。  すでに他界している者がほとんどだろう。  ──どうしたらいい?  そう言葉にしたいのに。 「あっ、ヴィル、そこはだめだ……また気持ちよくなっ……」 「レオ、ここ?」 「んぁっ……」  何度も内部に吐き出され、ヴィルターの精でいっぱいだ。  もっともっとと、ねだるように後孔はひくついて肉棒を奥へ奥へと咥えこむ。  レオンハルトの唇が震えた。  うわごとのように親友の名を繰り返す。 「ヴィル、ヴィル……このままずっと繋がっていたい」  復讐の言葉を囁いては、また激しく求め合う。  精を吐いたら、そのまま抱きあい甘い口調で密談を繰り返した。  どのくらいのあいだ、そうして睦みあっていただろうか。  気怠い疲れが身体を支配する。 「ヴィル、離れたくない……っ」  ぐずるレオンハルトを抱きしめ、唇を合わせながらもヴィルターの身体は椅子の背にぐったりと凭れかかった。  力を失ったそれがズルリと抜けて、レオンハルトの後孔からトロトロの液が溢れ出る。  荒い呼吸を繰り返し、それでも名残惜しそうに抱きあった。 「……ベッドですれば良かったな」  レオンハルトの掠れた声には笑みが混ざっていた。  汗で貼りついたシャツ越しに、ヴィルターの背が赤くなっていることに気付いたのだ。  食卓の椅子の角にレオンハルトの身体が当たらないよう気遣っていてくれたのだろう。  全身から熱が引いていくのに任せ、レオンハルトはヴィルターの膝に乗ったままぺたりと彼にもたれかかった。  べとべとの身体で下着をつけたくはなかったし、とにかく今は動きたくなかったのだ。  冷やりとした手に頬を愛撫され、満たされる。  しかし心地好い涼は、ときに冷水へと変じるのだ。 「なぁ、レオ」 「ん?」  額に貼りついた黒髪をかき分けてやりながら、ヴィルターが囁く。 「レオに言わなきゃならないことがあって……」 「なに? どうした?」  視線が絡む。  二人の声は甘い。  しかし、やわらかな言葉の内側には丸い刃が潜んでいた。 「あの夜、君の弟を屋根裏から逃がしたのは……おれなんだ」 「なに……」  凍りつくレオンハルトの頬を、変わらぬ優しさで愛撫する手のひら。 「森でレオらと別れて帰る途中、妹に泣かれたんだ。愛する人と引き離されるのが可哀想に思えて……」  愛撫は止まらない。  冷やりと心地好かったその手が、今はほんの少し冷たく感じられる。

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