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第7話 大丈夫

 今日は天野の一族の習い事がある日だった。  夏彦が俺の家に来ていたので当然のように俺の部屋に連れ込む。  俺の家は俺、妹、弟、父、母の5人家族だが、5階建ての家に一人一階で住んでいる。もちろんエレベーターはある。家の形をしているのに高さがアパートぐらいある家なのだ。これから先妹か弟が生まれたらどこで暮らすんだって話だが、今の所その形で過ごしている。  俺の部屋は5階。妹と弟が生まれる前から5階。飯を食う時は親父の住む一階のリビングに皆集まるが、キッチンや小型の冷蔵庫、風呂トイレ洗面所洗濯機なども一階ずつ付いている。  武道にしろ華道にしろ茶道にしろ稽古を受ける部屋は離れにあるので夏彦と会うのは家とは別の建物になるが、無理矢理うちのエレベーターに詰め込んで連れ去った。  しかしこれは毎回のことなので夏彦も慣れたもんで文句も言わずに俺についてくる。  5階に着いたら居間を通り抜けて寝室に向かう。 「夏彦、ちょっとこっち来い」  入り口の棚に置いといたモノを背後に隠し、ちょいちょいと夏彦を呼ぶ。  まだナツ、と呼んでいないからか、「なんだ?」と無防備に寄ってくる。  俺は夏彦の頭を捕まえて、口の中にガッとあるものを詰め込む。そのまま頭の後ろでベルトを固定した。 「ん!!んんう!!う!」  明らかに怒っている。 「これな、ボールギャグ。穴空いてるから息しやすいだろ」 「ふあえーあ(ふざけんな)!!」 「お前いっつも声我慢するだろ。ここ俺んちだから今日は思いっきり喘げ。朔也に聞こえるかもだけど心配すんな」 「うー!!」  いやいやと夏彦が首を振る。それを押さえつけてベッドに寝かす。  朔也っていうのは、俺の弟だ。妹が愛葉。俺、愛葉、朔也の順に生まれたが、部屋は上から俺、朔也、愛葉の順なのだ。  天上階なので喘いでも最悪朔也に聞かれるだけで済む。  天野の家ではバレると可哀想なので喘ぐのを我慢している夏彦を見続けていたが、今日からはこれがあるので思い切り声を出せるというわけである。 「あえ(まて)うーあ(ゆうが)」 「ん?何?」  怒った顔のまま俺の肩をどついてくる夏彦の手を後ろ手に捻り、今度はファー付きの腕を傷付けない手錠で拘束する。 「!!」  ショックで夏彦が固まる。  瞬間、ガチャガチャと抵抗しだした。 「オイ暴れんな。いくら保護付きでも痕になったらどうすんだ!」 「うー!!」  抵抗する夏彦。 「ナツ……。天野のモンが、久世に反抗する気か?」 「!!」  ぴたりと夏彦の動きが止まる。  そうだ。俺は久世一族の跡取りで、夏彦は使用人一族の天野。反抗なんて許されるはずがない。 「大丈夫だ。気持ち良いことしかしねーよ。な?ナツ……大好き」  観念したのか、すっと目を閉じる夏彦にちゅっちゅっとキスの雨を降らしていく。

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