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第12話 裸

「久世」  休み時間。友達の風巻が俺を呼ぶ。 「お前の幼馴染、校庭の水道で脱いで遊んでんぞ」 「!?」  俺は窓際へ駆け寄り校庭を確認する。  校庭でシャツを脱ぎ上半身裸の夏彦を発見する。夏彦は薄く鍛えられた筋肉がしなやかな裸を無防備に晒していた。 「おい、ホントに脱いでんじゃねえか!!」 「痛えっ!なんで俺!?」  俺は思わず風巻をシバいた。  校庭の水道は、台が地面に設置してある背の高い水飲み場だ。部活でスポーツをしている奴らはよく腰を折り曲げて頭から水をかぶっている。  夏彦は、友達数人と一緒に水道の下に座り、「滝行!!」などと言って騒いでいる。  服を脱いでいる夏彦たちの様子を見ていた女子たちが、キャアと色めき立つ。 「ズボン濡れる!」 「下も脱いじまえ!」 「バッカ」 「コラー!!お前ら、着替え以外で服脱いでんじゃねえ!!女子もいるんだぞ!!んなとこで遊ぶな!!」  案の定教師がやってきて、怒られている。 「おい……!アイツが俺以外の奴らに濡れた肌を見せて良いとでも思ってんのか……!」 「いだだだ俺に言うなって」  俺は風巻の首に腕をかけて締め上げる。 「夏彦~!これはあとでお仕置きだな……」 「え、お前、こんなんでいちいちそんなこと言ってたら彼氏としてやってけねえだろ。度量狭えって」  平然と言い放つ風巻を再度シバく。  お仕置きエッチ、して欲しがってたもんな。夏彦。  服脱いでたのは、本人意識してねえだろうけど。  やるしかない。俺の中で怒りが燃え上がる。  教師の言う通りである。着替え以外で何を服なんか脱ぐことがあるのか。あまつさえ水道で肌を濡らしてシャワー後と変わらん姿を公衆の面前に晒すとは。事後じゃねえんだぞ。  うちの学校は、プールが無い。だから水泳の授業なんかも無いし、気を付ければいくらでも服を着たまま過ごせるのだ。  1学期も半ばを過ぎて、夏彦が勉強にも運動にも一生懸命な良い生徒だということは周囲にも知れ渡っているだろう。それでもこういうところがあるから、いい子ちゃんってわけでもない。夏彦たちの上裸を見て女子が騒ぐのも無理はない。そういう奴なのだ。普段は健全な雰囲気で釣っておいて、ふとした時に不特定多数の前でも心をくすぐるような真似をする。色気無いくせに、どこかあざといのだ。  俺はあれからお仕置きエッチについて調べていてよかったなと思う。  お仕置きっつっても色々あるみたいだが、俺は夏彦が本気泣(マジな)きするような真似はしたくない。というかできない。俺の度胸的に。  しかしただ責めるだけではいつものセックスと変わらなくなってしまうので、買っておいた道具を使うことにした。 『ウチ来い』  それだけメッセージを送信して、学校終わり、夏彦がうちに来るのを待つ。  夏彦は学校から直接俺の家に来た。  エレベーターに乗ってノコノコやってきた夏彦を俺は捕まえるなり寝室に放り込んだ。  ベッドの上で夏彦がバウンドする。 「お前、今日服脱いでたろ」 「はあ?」  夏彦が何の話だとでも言いたげにこちらを見る。 「校庭で。水道のとこで」 「あれは、友達と遊んでいて……」 「だったら見せつける必要ねーだろ」 「見せつ……何の話だ」  俺は夏彦にキスをする。  舌で唇を割って入って、ぬるぬると舌を絡め取る。 「オメーの裸、女子から好評だったぞ」 「……そういうつもりで、脱いでたわけじゃない」 「オメーにそういうつもりが無くても、見る奴はそういう目で見んの」  女子だけじゃなく、もしかして男子にも。 「俺以外の奴の前で脱いでんじゃねー」 「脱ぐくらい、着替えの時にいつもしている。裸のまま服振り回して遊んでる奴だっている」  アホである。  しかし夏彦からしたら、責められる謂れはないのだろう。  周りの奴だってみんなやってるから。  でも俺からしたら、許せない。カラダで他の奴釣ってんのと同じにしか思えない。

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