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第16話 古賀
「誕生日なんだって?」
「どこから仕入れた」
「1年の部活の後輩。女子が彦星様じゃん~って騒いでるらしい。七夕が誕生日とか珍しいな」
風巻は携帯でゲームしながら興味なさげに話を振ってきた。
「探しゃいっぱいいるわそんなもん。またあいつは目立つようなことを……」
「これは不可抗力だろ。またお仕置きとかやめてあげろよ」
「しねーよ!これはしょうがねえもん」
膨れる俺に「お前がやっても可愛くねーぞ。なにが“もん”だよ」と風巻がツッコんでくる。
夏彦は、1年の間では有名な方なんだろうか。
「なあ、その部活の後輩って何もん?なんで夏彦の誕生日なんか知ってんの?」
「お前、知らねえのか。天野の隣にいっつもいる古賀って奴だよ」
「古賀?」
俺はいつもの夏彦をボヤ~ッと思い出す。
夏彦は1年で、俺は3年だからあまり接点が無くて、見かけることも少ない。
学年で階が違うから移動教室の時にもすれ違ったりなんて、しない。
それこそこないだの校庭で遊んでたときみたいに、派手なことやってなきゃ見つからない。
夏彦はいつも数人のグループでいるようだった。
その隣にずっといるってことは、古賀って野郎は俺と風巻みたいな関係なんだろう。
「お?古賀に嫉妬?」
「しねーよ。別に」
しかし素性は知っておきたい。
昼休み、俺は風巻と共に1年の夏彦のクラスへと向かう。
夏彦は、また馬鹿な遊びをしていた。
一人が椅子の上に立って垂直にシャーペンを落とし、一人がそれを空中で捕まえる遊びだ。
椅子に立っている奴がシャーペンを落とす。
夏彦がパシッとシャーペンを捕まえた。おおお~と周囲が盛り上がる。別の奴に交代して、そいつがシャーペンを落とした。周囲は野次を飛ばし、「ジュース驕りだ、驕り!」とそいつに群がる。
「古賀ァ!」
風巻が古賀を呼んだ。
古賀と呼ばれた奴がこちらを振り返る。
そしてその声でこちらに気が付いた夏彦も、振り返った。
「先輩!」
「久世!」
二人が駆け寄ってくる。
「風巻先輩、今日の週刊少年ワザップ読みました?『義理の妹と一つ屋根の下でファイッ!!』の最新話載ってますよ!俺感動しちゃって……まさかキョーコがマサルに対してあんな感情抱いてひた隠しにしてたなんて……ってまだ読んでなかったらネタバレになっちゃいますよね?あ、でも風巻先輩ならもう読んでますよね。毎週フラゲして」
「黙れ」
「ハイ」
古賀は、俺達に近寄ってくるなり弾丸のように話し出した。
話の半分も何を言っているのかわからないが、とにかく熱量があるということだけは分かる。
風巻が一言で古賀を制止した。
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