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第17話 おしゃクソ

「久世……古賀はな、おしゃクソなんだ」  風巻が言った。  おしゃクソとは、お喋りクソ野郎の略である。クソみたいな内容の話を喋り散らかしてくる奴のことを言う。 「お前が、風巻に夏彦の誕生日話した奴?」  俺は聞く。 「夏彦?……ああ、天野のことですか。確かに俺です」  古賀は夏彦のことを名字で呼んでいるからか、名前を思い出したかのように繰り返した。 「夏彦。こいつと仲いいの?」 「えっ……ああ。高校に入ってからの仲だが、古賀は良い奴だし頼りにしているぞ」  夏彦が俺の疑問に答える。  夏彦が高校に入ってから、もう3か月ぐらいになるのか。なのに俺は、こんな奴の存在を知らなかったなんて。 「古賀。連絡先交換するぞ」  俺の提案に古賀は躊躇せずに携帯を出した。 「はい。あのおー、あなたは一体?」 「久世優雅。夏彦の彼氏。夏彦のことは今後お前が俺に報告しろ」 「あっ、例の……天野のご主人様っ!?」  古賀が大声を出したので、クラスの大半がこちらを振り返った。 「馬鹿、古賀ッ」  夏彦が古賀をはたく。  女子の一部が「例の……」「ご主人様の……」「主従関係にあるっていう……」とコソコソ話し始める。  間違ってはいないが、大分事実からかけ離れているその噂に俺はくすっと笑う。 「そう。俺が夏彦のご主人サマ。だから俺が管理してやんの。そのために古賀は夏彦のこと監視しとけ」 「ははーっ。久世先輩様の仰せのままにーっ」  古賀がどんな世界観なのかいまいち微妙な態度で俺に礼をする。 「よきにはからえ」  俺はノッてやった。 「ははーっ」  古賀がまた礼をする。 「じゃあな。用はそれだけ」  そう言うと俺は夏彦の頭を撫ぜ、風巻と共にその場を後にした。 「な、あんなんが横に張り付いてたら大抵の奴は天野に手ェ出せねえだろ。良い虫よけだと思わね?」  風巻が笑う。 「そうかもな」  俺は古賀から早速送られてきたメッセージを開ける。  写真が一枚。夏彦が両頬にピースをくっつけてニッと笑っている画像。  俺は画像保存をして、その写真を携帯の待ち受けに変えた。

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