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第18話 手紙

 七夕は、平日だった。  夏彦は家族にはその週の初めの日曜日にホールケーキも用意して、祝ってもらったらしい。  俺は当然、当日に夏彦の部屋に押しかけた。  俺は今日の為に手紙をしたためていた。  手紙なんて、もう何年も書いていない。小さな頃は書いて、交換したりなんかもあったかもしれないが、最近じゃめっきりだ。最後に手紙をいつ書いたのかさえ思い出せない。  なぜ手紙なんてものを用意したのかというと、俺と夏彦が両想いになってから(半分無理矢理だが)初めての誕生日だからだ。 「夏彦、今日飯食いに行く予約しといたから」 「ああ、ありがとう。今日は久世と食べてくると知らせよう」  俺の誘いに、夏彦は携帯を弄る。おそらくメッセージでやりとりしたのだろう。 「これ、誕プレ」  俺は中くらいのサイズの袋を渡す。 「ありがとう」  夏彦が嬉しそうに笑って中身を開ける。 「カーディガン」  まだ夏だが、秋から春頃までは着られるものだ。  うちの学校には指定のカーディガンは無いので、学校に着て行けという意味だ。 「おお!ちょっと着てみても良いか?」  テンションが上がった様子の夏彦がカーディガンを羽織る。  プチプチとボタンを閉めて、可愛く萌え袖……、なんてことにはこいつはならない。  腕をたくし上げたカッターシャツに合わせて肘までカーディガンの裾をずらす。  これはこれで、萌えるけど。  腕の筋肉とか血管、骨ばった関節がよく見える。 「動きやすいし、おしゃれだ!」  夏彦が喜ぶ。 「気に入ってくれたんなら、良い。秋になったら着ろ。あと、手紙」 「……手紙?」 「ああ。読んでやる」  俺は書いて来た手紙を封筒から出した。 「なんだ!嬉しいなあ」  夏彦がベッドに座っていた俺の隣に座る。 「読むぞ。えー、拝啓天野夏彦。  俺達は気付いた時にはもう一緒にいて、お前が生まれてからこのかた15年の付き合いになりますね。  今年の誕生日で16年目に突入します。  そんなわけですが、俺はお前と一緒に生きて行くだけじゃなくて、お前が俺のもんじゃないと俺が生きていけなくなりました。  昔お前は、近所の公園で女児に夏彦君と結婚する、とか言われて求婚されていましたね。それは全部反故になります。俺と結婚するからです。  夏彦が高校を選ぶとき、わざとお前がうちの学校に来るように仕向けました。素直なお前は俺の言うこと聞いてうちの学校に来ましたね。幼稚舎から中学まで通ってた俺らの学校、捨ててまで付いてきてくれた。お前がいるおかげで俺は毎日ハッピーです。  お前みたいな奴のことを好きになれて、お前が俺の幼馴染で、恋人になれて、俺は幸せ者だと思います。ずっと一緒にいたいです。いてください。  何が言いたいかって言うと、俺はお前と出会えて良かったってこと。  生まれてきてくれてありがとう。  久世優雅」  俺は便箋を折りたたんでまた封筒に入れた。夏彦に封筒を渡す。

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