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第21話 勉強
期末テストが返ってきた。
期末テストで点数を落とさなかった夏彦は順調。40点以下が1教科あった俺は補習である。
うちの学校は40点以下で赤点。
俺は小中学生の頃は家庭教師なるものを付けて貰っていたが、過去の反抗期で家庭教師になる人間全員を首にしていたら親父にお前にはもう家庭教師は付けんと引導を渡されてしまい今に至る。
もちろん妹の愛葉と弟の朔也には家庭教師がいる。
一応勉強もしなければと一夜漬けでなんとかやってみたが、この結果だ。
夏彦のように普段から勉強に勤しんでいるわけではないので、俺の能力値は正直言って高くない。
「な……な……夏彦ぉ……」
「触るな」
パシン!と夏彦が俺の手を叩き落す。
俺は今、盛大に焦らしプレイを行使されていた。
期末テストの点数が悪かった俺に夏彦が初めて本気の拒絶を示しているのであった。
いつもはなんだかんだ流されてくれるか、俺には従順な夏彦だが、今回ばかりは引く様子がない。
「うっ……ちょっとでいいから触らせて……」
「やめろ」
また、パシン!と手を振りほどかれる。
「ああああ~っ!!」
「久世……俺と一緒に毎日予習復習をするんだ。そしたら俺に触っても良い」
「ま……毎日!?」
「そうだ」
地獄である。
予習復習なんてしたことも無い。
強いて言うなら課題は自分の分は自分でやっている程度だが、正解かどうかは問わずにやっているので本当の所を言うとあまり意味がない。
「お前……今年は受験生だろう。俺は受験期は流石に塾に通っていたが久世は一人で何とかするつもりだろう。そしたら予習復習ぐらいのことはしないと第一志望には受からない」
「受験なんて……まだ先ッ……」
「もう一学期が終わるんだぞ!一学期が終わった高3なんて夏期講習にでも行くのが定石だろう!行かないならそれくらいやれ!」
「ううう……」
「毎日俺の部屋に来たらいい。習い事の日は久世の家に俺が行くし……勉強が終わったら、いくらでも触っていいから……」
「いくらでも?」
「……ああ」
なんだか間があったが了解を得られたので俺は夏彦の尻に手を伸ばす。
「ダメだと言っているだろう!」
「うあああ!」
「触るのは勉強が終わってからだと言っただろう!」
おっしゃる通り!
俺は夏彦の正論パンチと根気に負けた。
セックスの時は文句一つ言わないくせにこういう時には強行してくるのが夏彦という感じである。
俺を思い通りに動かしたいわけじゃない。
本気で心配しているのだろう。
俺は別に有名な大学に行きたいとか学力の高い大学志望だとかいうわけではない。しかし家業が家業である以上、特定の学科がある大学を目指さなければならないので、第一志望には受かるよう努力しなければならない。
努力。17年生きた俺の人生で無縁だった言葉だ。
その努力をさせるのが父親でも母親でもなく夏彦というところが若干複雑な心境だが、こうなると夏彦は折れない。世間的に見ても自分が正論を言っているのだとわかっているときは特にだ。
夏彦に乗せられて俺はこの後滅茶苦茶勉強した。
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