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第22話 漫研

 夏休みである。  夏休みの課題に埋もれながら毎日を過ごす日々。  相変わらず夏彦は勉強してからじゃないと触らせない、を徹底している。 「ああ~終わった!今日の分終わり!」  俺は何ページ何章と区切られている課題を片付けて放り出した。 「俺も、もうすぐ終わる」  そう言う夏彦に構わず夏彦の服の下に手を忍ばせる。 「っ待て……終わってから……」  ぶるっと身体を震わせる夏彦に気をよくした俺は夏彦の身体をすりすりと撫でまわした。 「もうっ……本当にやめ……」  カシャンとシャープペンを夏彦が落とした時だった。  ピンポーン。  チャイムの音。 「見てくるから……離せ!」  俺の手をすり抜けようとする夏彦をぎゅっと抱きしめる。 「貝原さんが出てくれんだろ。いっつも任せてるくせしてこういう時だけ出ようとすんな」  貝原さんとは、天野の家のお手伝いさんのことである。  郵便から来客まで来訪客の面倒は貝原さんが見てくれる。  貝原さんとお客さんが何か話している声がするが声が遠くて誰なのか、何の話をしているのかもわからない。  暫くすると、声が止んだので帰ったのかと俺は夏彦の身体をまさぐる手を再開する。 「ぁっ……」  夏彦が小さく喘いだ時。 「あれ……ヤッてる?」  ガチャリとドアが開いた。  そこには菓子折りを手にした古賀が立っていた。  カッと顔を赤くする古賀に、夏彦が背後から抱きしめている俺の腹に肘鉄を入れる。 「ゴフッ」 「し、してない!何も!」 「いや嘘、流石に俺でもわかるわそれは。ヤッてなくてもヤろうとしてただろ」  古賀はこちらを極力見ないように目を逸らしながら会話を続ける。 「ど、どーも久世先輩様、こんにちは」 「……なんで来た」 「チャリで……」 「何で来たとは聞いてねえよ」 「も、元から今日は古賀と遊ぶ約束をしていたんだ」  夏彦が俺の手をペイッと引きはがす。 「そう、あの、今日俺部活休みで……部活休みの日は天野と遊ぼうって約束してたんです。まさか久世先輩がいらっしゃるとは思ってなかったですけど彼氏ですもんね。そりゃいますよね。ていうか約束してたとはいえ俺の方が邪魔てか流石にヤる直前に出くわすとは俺も思ってなかったですけど言っちゃえばこの予測ができていなかった俺の方が気いまわってなかったっつーか」 「黙れ」 「ハイ」  今日もおしゃクソな古賀を一喝すると大人しくなった。 「部活ってお前……漫研だろ。なんか夏休みのフェスかなんかに参加するとかで漫画描いてて忙しいんじゃなかったか」  古賀と風巻は漫画研究部、通称漫研に所属している。  普段の活動は漫画を読んだり語ったり漫画の下書きをしている程度みたいだが、夏休みや冬休みになるとイベントに漫画本を自作して売るだのなんだのと言って漫画を描きだす。  その締め切りに追われていて風巻は長期休みはいつも忙しそうなのに、古賀は夏彦と遊ぶ約束をしているのだという。

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