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第25話 タイプ

 主人公の名前を入力する画面が出てくる。 「んなもんテキトーで良いだろ。古賀にしとくか」  なぜか名前はフルネームでないと進めない仕様になっていたので古賀のフルネームを入力する。  場面は切り替わり、主人公の親が突然再婚をしたと親から知らされる。 「再婚なんつー大事なことをなんで子供に黙っとくんだよ」 「どんな親だ」  俺と夏彦のツッコミもそこそこに場面は進んでいく。  親との顔合わせで、主人公の母親と結婚する男が自分の子供を紹介する。 『……私にも連れ子がいてね。ほら、挨拶しなさい』 『……俺に迷惑かけんじゃねえぞ』 『嘘!?同級生の塔矢!?』 「どんな確率だよ!主人公高校生だろ!?同じ高校の同級生が再婚相手の連れ子とかねえだろ!」 「まあまあ、先輩……。そこがドキドキ萌え萌えするんじゃないですかあ~」 「するか!コエーだろ、普通に!」 「……それで、俺達はこの塔矢と恋愛をすればいいのか?」 「ノンノンノン」  夏彦の疑問に古賀がチッチッチと指を振る。 「乙女ゲーには複数人攻略対象のキャラクターがいて、その中から恋愛する奴を選ぶんだよ。だから全員出てきてからが本番。塔矢はまだ前戯ってわけ」  場面は移り変わり、学校にて。 『なんだか廊下がざわざわしているなぁ……なんなんだろ』 『オイ、古賀』 『……生徒会長で従兄の、正樹!?どうしてうちのクラスに……!?』 『お前に会いに来た。っていうのは建前で、生徒会のアンケートを各クラスに集めに来たんだよ……フッ、ドキッとした?お前、昔から俺のこと好きだろ』 「んだこいつ!生徒会のアンケートなんか担任が引き取れよ!つーかこいつらにとっちゃ初対面じゃねーのかもしれんが初対面の奴に好きな奴面されんのキモい!」  俺の反応とは対照的に、夏彦は黙り込んでコントローラーのボタンを横から押して話を進める。 『古賀は昔から俺の後ろをついて歩いていたからな。この学校でも、俺の後付いて来たかったら一緒に来ても良いんだぜ?』 『もう!正樹ったら!また昔のこと持ち出して!私だって高校生にもなってそんな真似しないわよ!』  怒る主人公とフッ……と口で言っているのか鼻で笑っているのかわからないため息を出す正樹。  夏彦はさっきから黙り込んでじっと画面を見つめている。 「あっもしかして……正樹って天野のタイプ?」  古賀が聞き捨てならない一言を発した。 「はぁ?こんな奴がタイプなわけないだろ。夏彦は俺だけだもんな」 「……」 「え?」 「……ちょっと久世に似てると思っただけだ」 「どこが!?」  本当にどこが!?  俺は生徒会になんて所属していないし自分の後をストーカーしても良いなんて言わない。「お前、俺のこと好きだろ?」とは言ったことがある気がするが、夏彦に対してこんな昔のことでマウントを取ったりした記憶はない。いやあるのか?わからなくなってきた。

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