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第28話 浴衣

 夏祭りといえば、浴衣だ。  俺は毎年夏彦に浴衣を着させる。夏彦に着せるために俺も着る。  帯の結び方などは分からないがお手伝いさんにやってもらっている。 「そんな履物でよく転ばねえな」  風巻が俺と夏彦を見て感心したように呟いた。  風巻と古賀は夏祭りだが、普通の私服で来ている。  浴衣なんて持っていないそうだ。  俺と夏彦は、浴衣。カランコロンと下駄を履いて移動している。  俺は恋人同士として夏彦と手を繋ぐ。  夏彦が当然のように手を握り返してきて、なんだか感動してしまう。これが恋人パワーという奴か。  今までではあり得なかった反応にぐっと感動が込み上げる。  俺は別段屋台や花火が楽しみというわけではない。屋台や花火に浮かれて楽しそうにしている夏彦を見るのが楽しみなのだ。  古賀は、夏休みに何度も夏彦のうちに遊びに来て俺達がイチャつくのを見ても騒がなくなった。風巻の態度に感化されたのか、多分慣れたか諦めたんだろう。今も目の前で手を繋いでいても何も言わない。 「お前らも手繋ぎたかったら繋いだらいいよ」 「誰が誰とですか!皆が皆男が好きなわけじゃないですから」 「俺は男が好きなんじゃなくて夏彦だけが好きなんだけど」 「あっそうですか……」 「うん」  俺の態度にげんなりとした古賀が風巻の方に寄る。 「お前天野と屋台行かなくていいのか」  風巻が古賀と夏彦に聞く。 「金魚は、池に放しても生きるものか?」  金魚すくいの屋台を見て夏彦が俺に質問する。悪いが俺んちの池も金魚は居ないのでわからない。 「他のやつにしとけ。金魚は割とすぐ死ぬから。ヨーヨー釣りあるぞ」 「古賀!ヨーヨー釣りしよう!多く釣れたほうが勝ちだ!」 「よっしゃ!俺こういうの得意よ?」  夏彦と古賀が屋台のおっちゃんに紙でできた釣り糸を貰う。  古賀は本当に得意なのか、すいすいと一つ、二つと取っていく。 「風巻先輩これあげます」 「すげえなお前」  対して夏彦、一つ取っただけで紐が切れてしまった。 「あっ……」 「久世先輩もこれあげます」 「おお」  俺、風巻に一つずつヨーヨーを配り、自分でも両手にヨーヨーを持った古賀は4つ取りである。あの脆弱な紙の糸でどうしてそんなにとれるのかはわからないが、古賀は上手かった。 「俺の勝ちーぃ!次の屋台天野のおごりな!」 「むぅ……」 「天野!りんご飴買って!」 「よし、行こう」  二人してりんご飴の屋台へと駆けていく。

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