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第31話 文化祭準備
学校が始まって、数週間が過ぎた。
夏休み中、盆はお互い親族の集まりに忙しかったため会えなかったが、大抵は夏彦と一緒にいた俺は学校が始まってまた放課後に俺が夏彦の部屋に入り浸るか俺の部屋に呼び出すかの生活に逆戻り。
俺も夏彦も部活には入っていないので会える時間は長いわけだが、今度は文化祭の準備が放課後にも入ってきた。
「1年やってんなぁ。あの木材運んでんの、天野だろ」
「ほんとだ。暑くねーのかな」
軽トラに乗った器材を運ぶために校庭を行き来する夏彦のクラスを窓から眺める。
木材なんて使ってどんな大掛かりな催し物をやるのかは知らないが、生き生きと活動している夏彦が見られて俺は満足である。
ちなみに俺と風巻のクラスは段ボールを使った迷路だ。
段ボールはコースに沿って後から並べていくので迷路のコースを作って床にガムテープで並べる目安を貼っていくのだが、迷路のコースが中々決まらない。各々が考えてきた迷路を提出したものの、教室一つ丸々迷路にするには少し狭く、かといってはずれのコースを減らすと広くてスカスカになってしまう。
うちのクラスの文化祭委員が黒板にいくつか良さそうな迷路を描いていく。
「とりあえずこの3つの中から選んでもらおうと思います。はずれのコースが2つか3つのものだけに限定しました。挙手で多数決取りまーす」
どの迷路でもどう違うのかわからないので適当に手を上げる。
「じゃあC案の迷路で決定します。机片づけて、床にテープ張っていくよー」
ガタガタと皆席を立ち、机を教室の後方へと詰めていく。
「ガムテープこれ色違うんだけど!」
「色は違っても良いでしょ」
「待て、端から順番にやって行ったら最後スペースが足りなかったり余ったりするんじゃないか」
各々に言いたいことを口にしていく。
俺も風巻もガムテープを貰ってみんなと同じように床に座り込んだ。
「文化祭準備始まると1年の時思い出すなぁ。お前、この学校来て良かったって泣きかけてたじゃん」
風巻が俺に肩をぶつけてケラケラと笑う。
そう、2年前の俺は幼稚舎から通っていた金持ち学校にそのまま進学せずにこの学校に来た。前の学校のときは文化祭には金を使うのが当然。業者にやってもらうのが当然。極めつけにガチの女装・男装コンテスト……などなどいろいろな伝統があったのだが、この学校に来て初めて自分たちで作る文化祭というものを体験したのだ。俺は感動して、風巻の前で泣きかけた。勿論この学校には女装・男装コンテストはない。あってもネタ枠だろう。
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