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第32話 ガムテープ
「隣のクラスは生物の教師が担任やってるから水族館にするらしいぜ」
「水族館て、金魚とかカエルとか生物部で飼ってるやつだろ」
「そうそう」
「生き物の説明プレートに書いたりして楽しそうじゃん」
「まあ、そうだな。それまでに展示予定の生き物が死んだり当日死んだりしなきゃ楽しいだろうな」
「お前のその考えはちょっとサイコパス入ってるからやめた方が良いぞ」
風巻がビーとガムテープを張りながら隣のクラスの情報を俺に漏らす。
どこからそんな情報を仕入れてくるのかはわからないが、風巻には同じ中学だった奴もいるだろうし、色んなツテがあるのだろう。
クラス全員でやれば案外早く半分が終わった。
女子と手がぶつかって「あ」「ごめん」と恥じらい合っている男もいる。
コース取りを間違えてガムテープを大分無駄にしている奴もいるが、大方コース通りにガムテープを貼れているだろう。
「じゃあ机前に移動して!ガムテープはがさないようにね」
文化祭委員の指令通りに皆机を運んでいく。
机が運び終わったら、後半のガムテ貼り。
全員失敗せずに合っているのか机を全部廊下に出して確認したいところだがこれは自分たちを信じる他ない。
「明日は実際に段ボール組み立てて曲がり角に印付けてペンキで色塗りやってくよ。段ボール組み立てて片づけるだけで時間かかるからどこまでやれるかわからないけどそういう予定です」
「はーい」
文化祭委員の声に口々に返事する。
机をいつも通りの配置に戻す。床にガムテープが張られているのが新鮮だ。剝がさないように机を持ち上げて運ぶ。
「じゃあ今日はここまで!」
「ばいばーい」
「じゃなー」
皆帰り支度をしてそれぞれ帰っていく。
いつもより帰るのは遅れるが、皆で何かするのは楽しいと思う。
自分たちでできる範囲のことを考えて小規模でも考えてやる。以前の学校に通っていた時には無い発想だった。以前の学校では結果が全てのようなところがあって、業者を利用して本物のレストランのように喫茶店をやったりしていた。食べ物は勿論専門店に依頼していた。この学校では自分たちで作れないなら食べ物系はやらない。やるなら業務用で予算内に抑えて。そんな風にしているから、二つの学校ではやり方が全然違う。
俺はこの学校のやり方がそこそこ好きだった。
今日は天野の習い事の日。
習い事で夏彦がうちに来るのでそのまま今日も俺の部屋に泊まらせるつもりだ。
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