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2-1シャルシパの三姉弟

「そろそろ理性が戻ったか?」 朝餉の時間に間に合わなかった弟の部屋を訪問したウルリナが、盆に載せた茶器を手に微笑みながら発した第一声がこれであった。  決まり悪そうに長椅子にもたれたグァンランの目には、大きなクマができている。  深夜の捕り物のあと、離れた恋人から受け取った手紙は完全に彼から眠気を奪い取った。  ヒートに悶えるオーミアを抱く妄想で自分を慰めた。  綺麗に着付けた長い衣を一枚一枚暴き抱きしめ、身体中に幾つも口吻をし、小麦色の美しい肢体を開いてゆく。思うまま抱き合って、とめどない快楽に蕩ける恋人のうなじを深く噛むのだ。  その眠れぬ夢は夜空が白むまで続いた。 「理性は手放してないけど」 姉にそう答えながら『よく言う』とグァンランは自分に突っ込む。  ウルリナは濃く濃く出した茶を弟に渡した。 「理性があってその状態なら、オーミア殿もさぞ頼もしいこと」 「姉上。俺たちのことには口を出さないでくれ」 「口を出すわい。こっちは婚約解消の危機なんだ。言っておくけれど、私はわが婚約者を愛してるし、向こうも子を授かる場合はどちらが産むのでも構わないと言っているのだ。政略がなんだ、私達は絶対別れないぞ。………とはいえ、お前の方も茨の道か」  一息に言ってから、ウルリナはため息をつく。  が、再び弟を睨み、彼のようやく熱をおさめたと見える所をビシッと指さした。 「というか貴様の子種ここで無駄撃ちしないで本番の時に備えて貯めておけ。次に会ったとき事実を作れ。本番一発着床の気合いでいけ」 「うるせえ無駄撃ちって言うな。定期的に出さなきゃ破裂するわい。乱暴なこと言うな順序を踏ませろ」 「………俺はともかく、あんた達がそういうこと言うのはちょっとやめて?」 不毛に下品な気配が濃くなってきた姉と兄のやりとりにツッコミを入れたのは、普段一番下ネタを発する末っ子・オルオンだった。  姉と同じことを考えたようで、目が覚めるよう濃く出した茶を持っている。  末の弟を見て、ウルリナはハッと思いついた顔をした。 「グァンとオーミアちゃんが駆け落ちして、オルがコノカちゃんに殴られたらどうにか収まらないか?ジアルちゃんαだったな?」 ナンファンの兄弟は三人。  長男のオーミア、次男のロカロ、妾の子で末っ子のジアル。  ロカロはβだが、ジアルはαだ。  上層部に男α至上主義が多いナンファンだが、妾の子と頭に付くとそれがまた障害になるらしい。 「え、や、俺ご政治ごとに向いてないの分かってるだろ。それにあの弟たちと仲良くできる自信がねえから………」 そう言ってオルオンは慌てて首を横に振った。  あの三兄弟で王を継げる器はオーミアだけというのが、シャルシパ側の三姉弟の見解だった。  ロカロは自分がβという劣等感からどうもねじくれており、ジアルは何時も大好きな魔法の研究で頭がいっぱいだ。  確かにこの二人ではオルオンと相性が悪そうだ。  ただ、オルオンが真剣に拒むのは何か他に理由がありそうだ、と洞察力鋭い姉と兄は感じ取っていた。

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