2 / 6
【事件記録XXXX-2】
記録日時:██年██月██日
関係者:
田中(仮名) - ███株式会社 ██支社 チーフマネージャー(当時)
河野(対象者A) - 田中の部下(当時)
河野(対象者B) - ██年██月██日より勤務(後述)
[記録:██年██月██日]
対象者Aによる田中への異常な執着行動の激化
██年██月██日以降、河野(以下、対象者A)による田中への執着が顕著に強まった。
特に「自らの命を引き合いに出す」言動が頻発し始めたことが確認されている。
[田中の証言]
「この頃になると徐々に『死ぬ』って言葉を使うようになった」
「俺が冷たくすると、すぐに『死んでやる』って言い出すようになった」
「最初は冗談かと思ってた。でも……最近は、本気で言ってるように思えた」
[対象者Aの発言記録]
「██(田中)さんが俺のことを見てくれないなら、もう生きてる意味がない」
「俺がいなくなったら、██(田中)さんは俺のことを思い出してくれますよね?」
「俺が死んだら、傷付いてくれますよね?」
また対象者Aは深夜に田中へ電話をかける頻度が増し、異常な時間帯の通話履歴が確認されている。
[通話履歴:██年██月██日〜██年██月██日]
23:14(2分間)
00:02(3分間)
01:37(不在着信)
03:45(10分間)
04:12(不在着信)
[田中の証言]
「もう、いつ寝ても起こされる状態だった」
「鳴るたびに、ああまたかって思った」
「でも無視すると……もっと悪化する気がして」
対象者Aは田中が着信に応じなかったり、通話中に田中が冷たい態度を取ると、「もういいです、死にます」と言い残し、一方的に電話を切ることもあった。
田中は当初これらの連絡に応じていたが、██年██月██日、ついに対象者Aからの深夜の着信を無視する。
[記録:██年██月██日]
対象者Aの無断欠勤と自殺未遂
██年██月██日、対象者Aは無断欠勤をした。
同日午前10時24分、田中は対象者Aの私用携帯へ連絡したが、応答はなかった。
次に、対象者Aの実家へ電話をかける。
午前10時41分、対象者Aの母親が電話に応じ、以下の情報が伝えられた。
対象者Aは前夜自宅を飛び出し、深夜に交通量の多い道路に進入。
目撃者の通報により、警察が保護。
病院へ搬送され入院。命に別状はなし。
対象者Aの母親は「意識はあるが動揺が激しい」と述べた。
[田中の証言]
「俺があの時、██(河野)くんの電話に出ていたら……」
「っいや、でも、もう限界だったんだ」
田中は本件について、「自分が対象者Aを拒絶しなければ、このような事態にはならなかったのではないか」と発言している。
[記録:██年██月██日 11時12分]
田中の目の前に〝河野〟が現れる
対象者Aが入院していることを知っているのは田中のみであった。
他の社員は対象者Aの無断欠勤を認識していたが、その詳細については知らされていなかった。
しかし、そのわずか三十分後――
対象者Aが入院中であるにも関わらず、職場に〝河野〟が出勤してきた。
[監視カメラ記録:██年██月██日 11時12分]
[映像開始]
職場のエントランスが開き、〝河野〟が入ってくる。
同僚たちが何気なく視線を向けるが、特に驚いた様子はない。
河野は自然な態度で挨拶を交わし、デスクへと向かう。
田中が硬直し、血の気の引いた顔で河野を見つめる。
河野が田中と目を合わせ、柔らかく微笑む。
[映像終了]
[記録:██年██月██日 11時14分]
河野の異常な存在
田中は河野に近付き、小声で問いかけた。
[会話記録:██年██月██日 11時14分]
田中:「██(河野)くん」
河野(対象者B):「あっ██(田中)さん、おはようございます」
田中:「……どうしてここにいるんだ?」
河野(対象者B):「何のことですか?」
田中:「今……入院中なんじゃないのか」
河野(対象者B):「██(田中)さん、何言ってるんですか? 俺は今ここにいるじゃないですか」
田中:「……」
対象者Bの表情は、まったく動揺していなかった。
まるで、〝河野〟の入院など存在しないかのように振る舞っていた。
[田中の証言]
「目の前にいるのは、確かに██(河野)くんだった」
「でも、あれは……」
しかし、周囲の反応は対照的だった。
[同僚の証言]
「何? ██(田中)さん、何をそんなに驚いてるんです?」
「……いや、普通に出勤してるじゃないですか、██(河野)。遅刻だけど」
「何か問題でも?」
この時点で田中は「他の社員は、対象者Bを普通の〝河野〟として認識している」ことに気付いた。
対象者Aが入院中であるにもかかわらず、職場には〝河野〟が存在している。
しかし田中以外の誰もそれを疑問に思っていなかった。
ともだちにシェアしよう!

