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第16話
心臓がおかしい。
体はガチゴチに固まっているのに、心臓だけがゴムボールのように激しく跳ねている。
柔らかい皮膚を破って、外に出てきそうな勢いだ。
浅見に繋がれている手が熱い。
汗もかいてる。べったりした感触を不愉快に思ったりしてないだろうか。
あれこれ頭で考えていたら、斗楽の耳にベッドのきしむ音が聞こえてきた。
催眠術、それとも夢遊病? どっちが原因かわからないけれど、いつの間にか斗楽も浅見の横に座っていた。
隣りを見ることもできず、俯いたまま、顔を上げる勇気が出なかった。
「斗楽くん……」
砂糖菓子のような、いや、違う。
もっと甘い……そう、蜂蜜のように芳醇な声で名前を呼ばれた。
浅見の手が頬に触れる。
心拍数が一気に上昇してきた。
操られるように顔を上げさせられると、すぐ目の前に浅見の瞳があった。
その眼差しは、何もかも見透かすように熱く、やさしくて……逃れられない。
恥ずかしさと高揚がせめぎ合い、でも目を逸らす勇気はなかった。
浅見の長い指で顎を捉えられる。
クイっと角度をつけられ、互いの吐息が混ざり合う。
唇がそっと……重なった。
羽根が触れるような口づけ。
けれどそれは初めだけで、唇が触れたまま、体を強く引き寄せられる。
さっきとは比べものにならないほど、深く唇が絡まり合った。
「んっ、んっあふっ」
口づけは徐々に激しくなり、浅見の唇は斗楽の桜唇を貪ってくる。
甘噛みしたり、吸われたりを繰り返され、斗楽の意識は朦朧としてきた。
それだけでは足りないのか、浅見の舌が斗楽の口腔内を占領する。
熱を帯びたキスに、息をする隙さえ奪われていく。
唇の端からこぼれた雫が、首筋をゆっくりと伝った。
厭らしい水音が恥ずかしくて、耳の奥まで熱くなる。
こんな音、自分のものとは思えない──。
「あ、さみさ……、苦しっ」
うまく呼吸ができず、唇が離れた隙に訴えてみたけれど、浅見はそれを許さない。
口淫の愛撫は終わることなく、斗楽は着ていたパーカーを剥ぎ取られた。
Tシャツをたくし上げられると、あっという間に白くて華奢な上半身が曝け出される。
浅見の顔が離れたのは一瞬で、斗楽の胸に顔を落とすと、二つの小さな突起に唇が触れてきた。
吐息の刺激を受けた先端が反応する。
それなのに、尖りから離れて周りの乳輪を熱い舌が這っていった。
触れて欲しい場所を避けられるもどかしさに、腰が無意識に弓形になる。
片方の突起を指先で器用に転がされると、頭が痺れて何も考えられなくなった。
快感が全身を駆け巡り、斗楽の理性をどんどん奪っていく。
「あ、あぁ……あさみ……さ、そこ、あぁ……。一緒に、さわんない……で」
いつの間にか浅見の右手が斗楽のズボンをずらし、下着ごと股間を擦られた。
自分以外の手が触れるそこが、痛くなるほど固く、熱くなってくる。
浅見の片手は桃色に染まった粒を指先で摘み、もう一方の手は斗楽の雄を執拗に扱いていた。
もう片方の突起は舌先で嬲られ、欲情の波に呑まれそうになる。
快楽の海に溺れないよう、首を左右に振りながら浅見の腕を必死で掴んでいた。
震える二つの器官は浅見の薄い唇で喰まれ、弄ぶように甘噛みを繰り返される。
次第にそこは芽吹いた蕾のように、ぷくっと紅く染まっていった。
「はぁ、あぅん……も、もうや……だ、でちゃう、でちゃ、あぁ、あさみさ──」
忘我する意識の中、視線の先にいた浅見と目が合った。
何かを言いかけたみたいに口が動いたけれど、すぐに閉じてしまう。
どう……してそんな、悲しそうな目をするんですか……。
「あ、さみさん、どうし──ああっ」
不安になり、浅見の頬に触れようと手を伸ばした。
けれどそれを阻むよう、浅見の手が激しく上下する。
雨のようにキスを浴び、指先が斗楽のモノをこねくりまわす。
まるで、斗楽の思考を閉じ込めるように。
触れられるたびに胸の奥がざわつく。
それなのに、浅ましい体はどんどん嬌声 を叫んでいた。
斗楽は耐えきれず、浅見の大きな手の中で果ててしまった。
「ご、めなさ、あさ……みさん、おれ、一人で勝手に……」
荒げた息遣いで言うと、触れるだけの口づけが額に落ちてきた。
「いいよ。でも俺は斗楽君の中に入りたい。いいかな……」
耳元で囁かれると、こくこくと、首を縦に振った。
熱の冷めない体から浅見が離れると、鞄の中から何かを取り出し、戻ってくる。
浅見が小さく包まれた何かを咥え、斗楽を見下ろしている。
それが、これから二人で使うものだとわかると、浅見のものになる喜びが湧いてきた。
着ていた服を脱ぎ捨て、浅見が屹立した雄にゴムをかぶせている。
再び浅見の体重を受け止めると、「冷たいけどごめん」と、予告された。
言葉とほぼ同時に、後孔にヌメッとした何かを塗られる。
冷たさと初めての感触に、ピクッと体が跳ねる。
硬い蕾をほぐすよう、浅見の長い指が窄まりに挿入され、浅いところからゆっくりとかき回されていく。
痛みから違和感に変化した斗楽の秘部に、指が徐々に増えていった。
奥へ奥へと、柔入 してくる。
何かを探す浅見の指が、違和感しかなかったそこへ刺激を引き出し、甘い疼きが腰を震えさせる。
「あ、あ、だめ触っちゃ……そこだめ……」
自分の意思に反していやらしい声がこぼれ、腰は揺れだす。
腹の奥の方が激しい突き上げを欲しているのが、わかってしまう。
丁寧に後孔をなぞられると、粘着質な音が斗楽の耳を犯す。
執拗に秘部を指が引き抜かれると、「中に入ってもいいか」と浅見が息を荒くしている。
斗楽はまた首を縦に振った。
浅見を受け入れる覚悟を示すよう、おずおずと膝を割ってみる。
「そんな可愛いことされると、むちゃくちゃにしたくなるな……」
浅見がそう言ったかと思うと、窄まりに猛々しいモノがあてがわれた。
浅見の固くて熱いソレが、斗楽の股間へと深く押し入ってくる。
いきり立った熱いモノが斗楽の処女孔をきしませ、ズズッと奥へ辿り着く。
熱い刃が斗楽の全身を貫くような痛み。
顔が苦痛に歪んでいくのがわかるけれど、どうすることもできない。
「あさ……みさん、入った……? 俺の、中……」
異物感を別のものにすり替えたくて、息絶え絶えに吐き出す。
「ああ……。斗楽君の中、温かくて凄く締め付けてくる……。ごめんな、初めてだろ? 痛いよな」
浅見が髪を撫でながら、斗楽を気遣う。
そうされることで、苦痛がふわりと安堵に変わる。
圧迫感と痛みで苦しかったけれど、浅見とひとつになった喜びの方が上回っていた。
「うごいて、ください。浅見さ……ん。俺、へいき……です、から」
「いや、でも、もう少しゆっくり──」
すぐそばまできている多幸感に耐えるよう、浅見が言った。
それでも斗楽は快感へ誘うよう、自ら腰を揺らした。
早く浅見のものになりたいと、焦る自分がいる。
痛みよりも快楽に期待している。
「っく、斗楽く……ん、そんなことしたら、だめ、だろっ。君を壊して……しまう」
「こわして、壊してくださ……い。俺をめちゃくちゃに。おれ、を浅見さんのものにして……」
斗楽は円環 を描くよう、腰を動かした。浅見の股間へと肌を押し付ける。
それが浅見を煽情したのか、細い腰を掴まれると激しい抽挿が始まる。
「あぁっ、あさ、さ、す……き、好き、です。だ、大好き、あぁ、うんくぅ……」
「……いい、凄い締ま、る。斗楽く……のなか。熱くて溶けそう……だ」
浅見が喜悦を漏らすと同時に腰の動きが早くなる。そうされることで、斗楽の体が宙に浮いてしなった。
恍惚とした声が、肌と肌がぶつかる卑猥な音と重なって部屋を満たしていく。
二人の悦楽が頂点に達すると、腹の上で揺れていた斗楽のモノから白濁が放たれた。
同じタイミングで斗楽の腹 に熱いものが放たれると、斗楽の瞳からは自然と涙が溢れていた。
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