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ヴェルト

 肩まで伸びる銀髪を後ろで一本に束ねた彼は、鋭い紫の双眸(そうぼう)でミキを睨み続ける。  背が高く細身な体を、ゆったりとした寝巻きで包んでいる。  彼……ヴェルトは、剣術に優れた冒険者。  10歳ほど歳が離れている為、カイラにとっては兄のような存在となりつつある。 「あっ……ぶねぇ! 死んだらどーすんだ! ったく……」  ミキは顔を青くしながら怒鳴った。 「でもこれで……ようやく食事にありつけそうだ」  と不敵に笑った後、ミキの体が無数のコウモリに変化し、窓の向こうで輝く満月に向かい消えてしまった。  ヴェルトは2本の剣を鞘に納めて窓と扉を閉め、鍵を掛ける。 「……カイラ君、大丈夫かい」  ヴェルトの声は、まるで父親が幼い子供に語りかけるかのように優しい。  月光を受けて艶めかしく光る貞操帯以外に何も身に付けていないカイラを一瞥(いちべつ)し、「遅かったか」と悔しそうに呟いた。 「さっきのは夢魔……呪いを掛けられたんだね。僕がもう少し早く来ていれば」 「いえ、ヴェルトさんのせいではありません」  ぼーっとする頭で何とか言葉を紡ごうとする。 「……もしかして、もっと前から呪いを掛けられていたのかい?」 「その……」  言い淀むカイラに視線を合わせるようにしゃがみ、「正直に言って」と誰をも安心させるような目を向ける。 「30日前から……」  「あぁ、どうりで」と言ったヴェルトは口を一瞬だけ噤んだが、別の言葉を見つけて話を続ける。 「もっと早く言ってくれれば、そんな風になるまで我慢しなくても良かったのに」 「……ヴェルトさんに、こんな姿見られたくなかったんです……」  ついに自分の穢れた部分を仲間であるヴェルトに見られてしまった……それなのに。 (どうして僕は興奮し続けて……いや、さっき以上に興奮し始めているんだろう) 「んん……♡」  ブルリと身を震わせる。  キンキンと疼く睾丸の中に溜まっている精を全て吐き出したい。  でもその為にはヴェルトの協力が必要で。  欲を取るか、誇りを取るか。    もはやカイラに選択肢など無かった。  ベッドの上で膝立ちして自分の穢れた部分をヴェルトに見せて…… 「ヴ、ヴェルト、さん……助けて、ください……♡」  と懇願した。  貞操帯の先端から欲望の露がポタリと落ちた時。  カチャリ……  と音を立てて、貞操帯がカイラの体から外れたのだ。

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