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指南
カイラとヴェルトが泊まっているホテルにて。
「はい、お茶」
椅子に腰掛けているカイラの前に、ヴェルトは静かに温かい茶を置いた。
「ありがとうございます」
カイラの対面に腰掛けて、ヴェルトも茶を飲む。
ヴェルトに全く茶の知識がないのが分かる……そんな味。
「カイラ君も落ち着いたようだし、ちょっとだけ指南しようか」
「はい。お願いします」
「まずねカイラ君、隙だらけだよ。僕が走り始めた時と、剣を振り下ろした時の2回。驚いて手を止めたり目を瞑ったりしたね?」
「そう……でしたね」
「特に剣を振り下ろした時。あれ、|躱《かわ》すかバリアで防げたはずだよ」
(真剣振り下ろされて平気でいられる人なんてそうそういないと思うけど……訓練で何とかなるのかなぁ)
「そして最後さ、僕がカイラ君の肩に手を置いて話しかけただろ? 隙だらけだったのに、カイラ君は攻撃も何もしなかったね」
その言葉を聞いたカイラは間抜けな表情を浮かべる。
「え? でも、もうその時には決着が____」
「着いたとは一言も言ってないよ」
優しい口調でカイラの言葉を遮った。
「もしあそこでカイラ君が魔法を撃ってたら、勝ってたんじゃない?」
「……理不尽だし卑怯過ぎませんか」
カイラはやや目を細めて呆れたような声を出す。
「いいかいカイラ君。戦いの場において、理不尽や卑怯という言葉は存在しない」
ヴェルトは茶を一口飲んでから更に話し始めた。
「どんな卑怯な手を使おうが、最後に立ってた奴の勝ちなんだよ。もう少し狡くなったらどうだい? カイラ君素直過ぎるんだよ」
それからも様々な事を指摘された。
咄嗟の魔法のチョイスは良かったものの、あまりにも軌道が真っ直ぐで読みやすかった事。
ほんの少しの挑発をまともに受け取ってしまった事。
仕方ないと前置きされた上で、経験不足である事を指摘された。
「……まぁ、そんなところかなぁ」
既にヴェルトのティーカップは空になっていた。
「ありがとうございました」
(ボロボロに言われちゃったなぁ)
改めて学校での試合とは全く違うのだと思わされ、カイラは少しだけ俯いた。
「さて、カイラ君」
「なんでしょう」
「5日間手伝い無しにしてたけど、昨日結局1回しか射精できてなかったでしょ? だからその分、今日させてあげる」
唐突な言葉に心臓が高鳴ったのと同時に、カイラの貞操帯が緩んだ。
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