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図書館にて

 今回ファンタジー要素強めです。苦手でなければ是非……    ***  ヴェルトとの特訓から数日後の事。  ここはレザーで最も蔵書数が多い図書館である。  建物のほとんどが木で造られている為、特有の香りや温かい雰囲気がある。  1人でここまで来たカイラの目的は、魔導書を読み強力な魔法を習得する為だ。  今のままでは自分はもちろん周りの人々も助けられない。もう夢魔の好き勝手にさせないように、カイラは魔導士として更に修行する事を決意したのだった。  館内マップを確認し、魔導書が並べられている場所まで行くと…… 「く……っ!」  必死に手を伸ばして魔導書を手に取ろうとしている、白いローブを羽織った小男がいたのだ。 「ふおおぉぉ……!!」  爪先立ちして体をプルプル震わせながら、懸命に手を伸ばしている。 「あの……」  カイラは男に声をかけた。 「なんだ」  返ってきたのは面倒そうな声。 「あちらに踏み台がありますよ」  カイラは本棚の横に置かれている台を指差した。  それに一瞥すらやらず、小男は不機嫌そうにため息を吐いた。 「何言うかバカ者め。そんな物使ったら負けではないか」 「えぇ……」  バカと罵られた上に謎の持論を展開され、カイラは困惑し声を上げた。 (何が負けなんだろ……)  やがて男は疲れたように爪先立ちをやめて一息付くと、 「ほっ!」  と声を上げて数回ジャンプした。  その程度で本が取れる訳も無い。  見かねたカイラは踏み台を持って行き、それに自ら登り目当てであろう本を取ってあげた。 「こちらですか?」 「おぉ、すまぬな」  人から取ってもらうのは負けではないらしく、小男は嬉しそうにカイラから本を受け取る。 「貴様、名前は」 「カイラといいます」 「カイラ……その緑のローブ、魔導士か」 「えぇ、まだ半人前ですけれど」  「気に入った」と小男はカイラに向き直る。 「マティアス・マジェスティック。マティアスと呼ばれておる」  純白の髪に灰の瞳を持つ……マティアスは偉そうに名乗った。  カイラよりも年下だろうか? カイラよりほんの少しだけ背が低く華奢で、顔立ちが幼い。その割に口調が偉そうなのが気になる。  全身を白で統一した服装に強いこだわりを感じさせる。 「マティアス……マジェスティック」  その名に聞き覚えのあるカイラは思わず名前を呟いた。  マジェスティック家は高名な魔導士の家系だ。  長年レザーの貴族達に仕えており、その働きが認められて苗字を貰ったという。 「カイラ貴様、私の若い頃に似ておるわ。聡明で、素直で、知的好奇心に溢れておる」 (この人一体何歳なんだ)  どう見ても自分より年下にしか見えないマティアスを不思議そうに見つめる。 「だが悲しいかな。貴様には強力な呪いがかかっておる」  その言葉にカイラの心臓が跳ねた。 「わ、分かるんですか?」 「あぁ。とてもここでは言えぬような呪いがな……可哀想に、貴様幾つだ」 「16です」 「年頃であろう? ……そうだ、本を取ってくれたお礼に、貴様の呪いの相談に乗ってやろうか」 「っ、いいんですか?」  カイラは目を爛々と輝かせる。 「良いとも。私もその呪いに少しだけ興味があるからな……何だったら、今から私の家に来ても構わない」 『もう訳わかんない人にホイホイついて行っちゃだめだよ』  頭の中でヴェルトの言葉が響く。 「あの僕、仲間がいて……その人と一緒でも構いませんか? その人と相談してからにしても?」 (仲間……そやつに処理してもらってるのか) 「あぁ、構わんぞ。いつでもマジェスティック家に来ると良い」  と上機嫌な様子でマティアスは去って行った。  カイラは思わぬ収穫に嬉々としながら、いくつかの魔導書を借りてにホテルへ戻った。

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