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踊るラブ
「はっ……あ゛♡」
今、ダーティとディックの2人はホテルの壁に貼り付けられた姿見の前で性交している。
ディックが鏡に手を突き、その後ろからダーティが愛しいペットの後孔をやや乱暴に穿つ。
2人とも裸であるが、ディックは服従の証である貞操具を。ダーティは支配者として貞操具の鍵をネックレスのように首から提げている。
「ラブ、目を逸らすな」
顔を下げていたディックの顎を掴み、無理やり正面を向かせる。
「しっかりと目に焼き付けるんだ」
そこには、美青年に抱かれている自分がいる。
腰を突かれるたびに頼りなく揺れる大きな体と、そこから出る手を叩くような音。
肉茎が貞操具いっぱいに膨らみ、格子状の檻から肉が少しはみ出ている。
屈辱的な光景が更にディックの被虐心をくすぐるのだ。
「ゔっ……ゔ♡」
「実に良い顔をしている。お前もそうは思わないか? ラブ」
「あ゛……っ、は……♡ ひでぇ、顔、だよ」
「そうか? 綺麗な顔だ。欲情に溺れた雌の顔……といった感じだ」
思わず鏡に突いている手に力が入る。
「あ゛ いだっ♡ いだ……ぁ」
骨折した小指から伝わってくる甘美な感覚に体を震わせる。
「締めつけが強くなった。まさかラブ、お前痛みでイったのか?」
「はぁ……っ♡ あ゛……っ♡♡」
貞操具に覆われた肉茎から少量の白濁が溢れ、鏡に付着した。
ダーティの槍の如き屹立で前立腺を刺激された事による、ノーハンドでの射精。
「また漏らしたのか? 可愛い奴め」
ダーティは乱暴に腰を打ちつける。これが更にラブを悦ばせると知っているからだ。
やがてディックは体を支える為に手のひらだけでなく肘まで鏡に突いた。
「もう立ってるのも辛いのか? ……だからしっかりと自分の姿を見るんだ!」
無理やり自分が人間に犯されている所を見せられながら、ディックは何度も気を逸する。
しばらくディックを支配し続け、ダーティは彼の1番奥に白濁を吐き出したのだ。
彼の屹立が中で跳ねて熱い物が注がれる感覚にディックは、もはや何度目か分からぬ絶頂に至る。
「はぁっ♡ は……♡」
「ラブ……綺麗な顔だ。あんなに鋭かった眼光がぼんやりとしていて……俺の事しか考えられないって顔だ」
立ったまま休んでいると、再び自身の後孔を掻き回される感覚を覚えディックは鳴いた。
「まだ足りない! ラブ、まだできるな!?」
「ゔぉ、お゛……っ!?」
大男が青年に責められながら、足をガクガクとさせる。産まれたての子鹿とはこの事だ。
「いだっ! いだ、いだっ!」
皮膚が突き破れるのでは無いかと思うほどの力で肩に爪を立てられディックは声を上げる。
ダーティは髪を掻き上げ更に乱暴にディックと性行為を……いや。ディックを犯し続ける。
彼の目はギラギラと危険信号のように光り、もはや彼特有の優美な雰囲気が失われてしまった。
「さぁ、俺が満足するまでもっと良い声で鳴けよラブ! もっと激しく淫れてみせるんだ!」
一人称が「私」から「俺」へ変わっている事に気付き、ディックは恐怖と期待で身を震わせる。
***
体制や場所を変えながら、ダーティはディックを弄んだ。
その間ディックは文句をひとつも言わず、ただ彼のオモチャとしての義務を果たした。
2人の荒い呼吸。手や水を叩くような音。貞操具と取り付けられた南京錠が触れ合う音。ダーティの口から時折浴びせられる罵声やロマンチックな言葉。
永遠のような時間。ダーティの滾る欲望をディックは満たし続けた。
身を震わせながら、ダーティはディックの口の中へ精を吐き出した。
「ん゛ゔっ!!」
口の中に精を含んだまま咳き込んでしまい、鼻から精を吹き出した。
口から萎えた陰茎を抜きディックの浅ましい姿を一瞥したダーティは、夢魔の扇状的な姿に息を呑む。
「……ラブ、そのままじっとしてるんだ」
ダーティは鞄から魔導カメラを出しディックに向ける。
「……あ゛?」
ディックの頭が理解する前に、ダーティはシャッターを切った。
「実に良い表情だ……ふふっ、またひとつコレクションが増えてしまった」
ディックは大義そうに鼻水のように垂れた精を手の甲で拭う。
「もうヤらない?」
「今日はもうヤらない……済まないな、これほど制御が効かなくなったのは久しぶりだ。あのカイラ少年の呪いはあれほど強力なのか」
終了の言葉に安堵しながらディックはこう返した。
「あの呪いは免疫のない人間ほどよく効く」
ふーん。と素っ気なく呟いたダーティは、部屋の隅に置かれていた水差しを手に取りグラスに水を注ぐ。
「ダーティ……俺達、何回ヤった?」
「さあな、私も覚えてない。鳴き続けて疲れただろう? ほら水だ」
ダーティから水を受け取り、それで口の中に残っている精を飲み下す。
「随分と気持ち良かったんだな? ずっと口角が上がってるぞ」
と微笑みかけるダーティに、ディックは「ん」とだけ返した。
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