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違和感の理由

「わぁ……」  屋敷のリビングを一望したカイラは感嘆の声を上げた。  ホテルの部屋とは比べ物にならぬほど広々としており、開放的だ。  大体の家具は揃えられていて、全て高級品だというのが家具に疎いカイラでも分かる。  天井に吊るされたシャンデリアと床に敷かれたエンジの絨毯が更に部屋の格式高さを引き上げている。  こんな所に、ヴェルトと住めたなら。 「カイラ君、早速捜索を始めてくれるかい」 「っ、はい!」  妄想の世界に飛び立とうとしていた意識をヴェルトに呼び戻され、カイラは杖を握り締める。 「『ルックフォー・イーブルスピリット』」  悪霊系のモンスターを探す魔法を発動させると、部屋中が青白い光で包まれる。  悪霊がいる場所は赤く光るのだが……どうやらここにはいないようだ。 「ここにはいないみたいですね。他の場所も探してみましょう」  ダイニング、キッチン、トイレ、ゲストルーム、書斎……などなどの部屋を全て探し回ったが、一向に見つからない。  そして最後に立ち寄ったのが、ハルキオンがおかしいと言っていた2階の寝室である。  ダブルベッドの存在感が大きな、ホテルのスイートのような寝室だ。 「『ルックフォー・イーブルスピリット』」  ここでも悪霊の反応は無かった。 「……悪霊のせいじゃないようですよ、ハルキオンさん」 「だってさ。君の勘違いじゃないの?」 「っ、そんな事ありません! だって……おかしいじゃないですか! この部屋だけ綺麗に片付けられてるなんて」 「きっと泥棒か何かの仕業なんだよ」 「そんな……だって、何も盗まれてなんか____」 「ヴェルトさん、ハルキオンさん。もう少し屋敷内を探索しましょう。もしかしたら何か見つかるかもしれません」 「……何も見つからなさそうな気がするけどねぇ」  ヴェルトの後ろ向きな発言を無視し、カイラは指示を出す。 「僕、もう少しこの部屋を見てるので、おふたりは別の部屋を調べてみてください」 「……分かったよ。ただ、何かあったらすぐ叫んで僕を呼んで。どこにいても駆けつけるから」 「あの、私も危なくなったら叫びますね」 「別に君の事は助けないよ」 「えぇ……」  一方的にヴェルトがハルキオンを嫌っている為、いたたまれない空気を纏う2人がカイラを置いて寝室から出て行った。

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