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男が5人集まれば その2
下着を脱いだ状態のヴェルトは、水の入ったコップをハルキオンに手渡す。
不能を治す薬を飲んだのだった。
「あの、ダーティ?」
「ん?」
何か? とダーティはとぼけたような顔でヴェルトを見下ろす。
「君も出て行ってくれない?」
「断る。こんなに面白い事、なかなかお目にかかれないからな」
人の話を全く聞かないダーティを部屋から出させる方法がない為、ヴェルトは深い溜息を吐いた。
「先程も説明しましたが、飲んでいただいたのが勃起を助ける薬です。長時間勃起しやすくなる薬ですが、やはり性的な興奮が必要でして……」
ちらっとカイラを見て、「カイラさん。お仕事ですよ」と呼びかけた。
「え……えっ?」
これから何をさせられるのかを何となく察したカイラは、頬を染めながらハルキオンの顔を見上げる。
しかし……カイラ以上にヴェルトは困惑し、ハルキオンをジト目で見る。
「こ……ここで、ですか?」
「そうですよ。カイラさんにしかできない仕事です」
自分にしかできない仕事……確かにハルキオンの言う通りである。
カイラは深く息を吐き、ヴェルトの隣に腰掛けた。
「えっ、本当にやる気かい」
「そうです! 僕の為に頑張ってください!」
とカイラは萎えているヴェルトの肉茎を刺激し始めた。
「……っ」
不本意ながら抱いた男と性的倒錯者に見守られながら、恋人に高められる。
「嫌なんだけど、他の人に見られながらなんて……!」
ヴェルトはカイラにだけ聞こえるような低い声で言う。
「僕だって嫌ですよ! でも、僕の為に気持ち良くなってください、お願いですからっ!」
2人の痴態をにやにや見ていたダーティは、隣にいるハルキオンに目をやる。
「先生」
久しぶりに先生と呼ばれたハルキオンはビクッと体を震わせた。
「なんでしょう」
「実にいいものですね。人の情事を覗き見るというのは」
「……はぁ」
その趣味趣向を理解できず、ハルキオンは間抜けな声で返す。
「嫌がっているのに体は素直なものです。ほら、すぐ勃ってきた。……アレ、専門家から見てどうなんです?」
ダーティが指差したヴェルトの屹立を見てハルキオンは、
(……よく挿入ったなぁ私……まさか、痔とかになってないよね?)
と己の尻を心配し始めた。
情を交えた時に自分の事に必死になり過ぎた為、ヴェルトの性器にまで目が行かなかったのだ。
(……念の為、後でリタさんに痔の薬も貰ってくるか)
「先生?」
何も答えず目を泳がすハルキオンに、ダーティは再び呼びかけた。
「あっ、すみません! えーと……まぁ、そのぉ……平均より大きいんじゃないでしょうか? えぇ」
突然頼りない口調になったハルキオンの事をちらりと見ながら、ダーティは「そうですか」とだけ返した。
「ヴェルトさん……すぐ気持ち良くなっちゃいましたね」
射精させぬよう気を付けながら、カイラはヴェルトの肉棒を手で擦り続ける。
「仕方ないだろ? 恋人にこんな風にされて……悦ばない男がいる訳がない」
「カイラさん、そこらへんで良いでしょう」
ハルキオンの指示で、カイラは怒張から手を離した。
ヴェルトは切なく疼き続ける陰茎をピクンと震わせる。
「で、これに___」
と呟きながら、ハルキオンは粘土を詰めた紙製の筒を逆さまにしてヴェルトの屹立へ。
粘土の冷たい感触にヴェルトは眉根に皺を寄せる。
「この粘土は歯の型取りにも使われる素材なので、安心してくださいね。で、このまま10分待っててください」
「……かなりキツい気がするんだけど。だって刺激無しだろ?」
「そうですね、そこはカイラさんに頑張っていただくという事で……ではダーティさん、私達もそろそろ退散しますか」
とハルキオンはダーティに視線を送る。
「…………」
最後までここにいるつもりだったらしいダーティも、流石に貴族のハルキオンには逆らえないのだろう。肩を落としてハルキオンと共に診察室から出て行った。
***
「ヴェルトさん、こっち向いてください」
「ん……」
カイラはヴェルトの両頬を手で支えながら口付けを交わす。
舌を捩じ込み、ヴェルトの舌と絡ませる。
頭に舌を絡ませ合う音が響く。
ようやく口を離すと、互いの唾液がまだ離れたくないと言うかのように糸を引いた。
「カイラ君、積極的だね?」
「そりゃそうですよ……ヴェルトさんに興奮し続けてもらわないといけないんですから」
頬をリンゴのように染めたカイラは、彼の耳を軽く噛んだ。
「カイラ君……僕、恥ずかしいんだけど。カイラ君に見られるのは全然良いよ? ハルキオンも……まぁ、医者だしね? でもなんでダーティとディックまで____」
何故かカイラはより頬を染め「ヴェルトさん!」と咎めるような口調で呼ぶ。
「ヴェルトさん何て事を……!」
「は? ……何? ディックの事?」
「~~~~ッ!」
カイラは何度も頷く。
「そういや知らなかったっけ? ディックはラブの本当の名前だよ」
それを聞いたカイラは痴呆的な表情を浮かべた。
「え……ラブさんの名前なんですか?」
「そうだよ?」
「本当ですか?」
「うん」
「本気で言ってるんですね?」
「しつこいな、本当だよ。……何? なんか変な意味なのかい」
カイラはコクリと頷き、ヴェルトに耳打ちした。
「……まぁ、そんな事は後で訊くとして。で? どうやって僕を興奮させてくれるのさ?」
「えっと……」
カイラは徐 にヴェルトの胸に手を伸ばす。
「だからさぁカイラ君」
ヴェルトはカイラの胸を服の上から強めに押した。
「んっ♡」
「ここ触られて気持ちよくなっちゃうのカイラ君ぐらいなんだってば。学ばないねカイラ君?」
その後、待合室で待機していたハルキオンとダーティの耳に届いたのはカイラの艶声ばかりだったとか……
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