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男が5人集まれば その3
「「「「「うわぁ……」」」」」
ヴェルトの屹立の型を取って作ったディルドが天を穿つように勃っているのを見た5人は、同時に呆れ声を上げた。
しかも窓から差し込む光が後光のようで、張形が更に滑稽な物のように見えてしまう。
ハルキオンは横目でヴェルトを見る。
「圧迫感がないように、柔らかなピンク色で作ってみたんですがね……」
実に興味深そうにダーティは顎に手をやりニヤリと笑う。
「今まで色々な張形を見てきましたが、やはり本物の型を取って作ったからか生々しいですね。……どうだヴェルト、自分のナニが晒される気分は」
「最ッ低だよ」
ヴェルトはダーティの問いに吐き捨てるように答えた。
「あの……ハルキオンさん。ちなみにこの張形って、もっと作れるんですか?」
少々声を低くしながら訊ねたのはカイラである。
「えぇ、一応可能ですよ」
「僕、もう1本欲しいなぁって」
それを聞いたヴェルトは更に羞恥心に飲み込まれる。
「なんでだよカイラ君……」
「魔除けに部屋に飾って置きたいなぁって」
「まよけぇ?」
頓狂な声でオウム返しするヴェルトと反するように、ダーティは乾いた笑い声を上げる。
「なるほどな! 確かに一部の地域では、悪魔祓いとして生殖器官を崇拝する宗教があると聞いた事がある。確かにヴェルトのならどんな悪魔も尻尾を巻いて逃げるに違いない。まぁ、夢魔だけは寄ってきそうだがな?」
「それきっと邪教だよ」というヴェルトの呟きを無視してダーティは続ける。
「では私も1本貰おうか。ヴェルトのナニに旅の無事を祈ろうじゃないか」
「勝手に祈らないでくれるかい?」
「ついでにラブのオモチャにもなるしな」
「やっぱりそういう目的じゃないのさ!」
カイラとヴェルトとダーティが騒いでいる中、
(……私も1本欲しいなぁ。いやあのそのけっ、決してヴェルトさんの男性器が恋しい訳じゃなくてその)
ハルキオンは頭の中で自分用のヴェルトの張形を貰う理由を考える。
「……売るか?」
ディックが凄みのある声で提案した途端、場が静かになる。
「大量に複製できんなら、売れば良い小遣い稼ぎになるじゃねえか」
「ラブ……良い発想だ」
流石私のペットとダーティはディックの肩をポンポンと叩く。
「黙っててくれるかい、ディック」
「ディック?」とハルキオンは目を丸くする。
「名前『ちんちん』の癖に」
魔法の言語で「ディック」は男性器を示す言葉なのだ。
「てっ、テメエ……! どこで知った!」
「わっ、やっぱそうだったんだ」
「カイラ、やっぱテメエか!! これだから魔導士は嫌いなんだ!」
「ひぃいぃいぃっ!」
3人のやり取りにダーティは乾いた笑い声を上げる。
「まぁ、ラブの名前なんて今はどうでも良いさ。それより目の前のナニが大事だろう? ヴェルトの顔写真も付けて売ろう。よく見ればお前もなかなか綺麗な顔だからな。飛ぶように売れるだろう」
それに反対したのはカイラであった。
カイラであったのだが……
「だっ、ダメです! ヴェルトさんのおちんちんは僕の物です! 誰にも渡しません!」
「か、カイラ君?」
「違うぞカイラ少年。ヴェルトの男根はみんなの男根なんだ」
ダーティはカイラを宥めるような口調になる。
「あの、ダーティ?」
「違いますよぉ! ヴェルトさんのおちんちんは僕のおちんちんです!」
「ちんちん以外も取り合ってよ! カイラ君もダーティもさぁ! ……ハルキオン、何笑ってんのさ」
ヴェルトは冷たい声で、肩を震わせるハルキオンに呼びかけた。
あまりにも直接的で下品な会話。
お上品な貴族のハルキオンは、このような会話を聞く事自体初めてなのだろう。
「ッ、すみません調子に乗りました」
ヴェルトの鋭い視線にハルキオンは冷や汗を流し謝る。
ヴェルトは自身を落ち着かせるように深く呼吸した後、ハルキオンに向かって手を伸ばした。
「僕はあくまでカイラ君の為だけに型を取らせたんだから。もうこれ以上複製させないよ。型取った粘土、僕にちょうだい」
「…………」
(せっかく自分用のオモチャを複製しようと思ってたのに……)
「ハルキオン?」
「あっ、いえ。何でも……」
ハルキオンは少々名残惜しそうに粘土をヴェルトに手渡したのだった。
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