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可愛いものほど…

「いた……い」  初めて体を重ねてから2日目の朝。カイラは下半身に痛みを覚えて目を覚ました。  健全な男子になら誰にでも起こりうる現象が起きたからだ。  重力に逆らおうとするカイラの分身は、無機質な小道具に阻まれ生理現象すら許されない。 (苦しい……っ!)  貞操帯との付き合いも長くなったが、どうしてもこの感覚には慣れない。  自分の一部なのに自分でコントロールできない。  ヴェルトに貞操帯の事を知られてから、性の事に関しては全て彼に任せきりになってしまっている。  彼に迷惑をかけないように。己の性欲の強さを彼に知られぬように。カイラは今まで何度か己に禁欲を強いた事がある。  だが、結局我慢できなくなりヴェルトに射精をねだってしまう。  その度に強烈な敗北感を感じ、男子としてのプライドが傷付くのだ。 (射精したい……のに、勃たない……)  カイラは無性に虚しくなり顔を歪めた。  少年とは対照的に、ヴェルトは未だに安らかな表情で深い眠りに落ちているようだ。  上半身を起こしてヴェルトを見下ろしたカイラは……ある事に気が付いた。 (うわ、ヴェルトさんも朝勃ちしてる……)  布団に不自然な丘が1つそびえ立っているのだ。 (布団の上からでも勃起してるの分かるの凄いな……)  ヴェルトが起きぬよう注意しながら布団を捲って彼の寝巻きをはだけさせる。  すると、下着の中で窮屈そうに怒張しているヴェルトの肉棒が現れたのだ。  頬を膨らませ眉根に皺を寄せたカイラは、唇を尖らせながら恨めしげに呟き始める。 「ズルい……気持ち良く朝勃ちしてる……ズルい……僕は朝勃ちできないのに……」  勃起できない事への不条理さを感じている最中。目の前で気持ち良く寝ている男は伸び伸びと勃起している。  性への関心も高い年頃のカイラにとってはあまりにも残酷。 (どうしよう、まだ朝なのに……もっとエッチな気分になってきちゃった)  理不尽な現実が、カイラの劣情を更に掻き立て小さな檻の中で囚人を膨らませる。 『カイラ君、虐められるの意外と好きでしょ?』  2日前に言われた事……それはカイラ自身自覚し始めていた。  思えば最初からそうだ。  ヴェルトと初めて兜合わせなる行為をした時、あまりに自分のモノが彼の屹立より劣っていたのを思い知らされ、何故か更に体がカアッと熱くなったのだ。 「ヴェルトさん……っ♡」  昂りを抑えきれなくなった結果、カイラは暴挙へ出る。  寝ているヴェルトの下着を静かに下ろした。すると熱を帯びている怒張が露わとなる。  やや浅黒いソレは経験の多さを感じさせ、自分のモノの何もかもを大きく上回っている。  清潔に保たれている肉棒へ顔を近づけると、雄の臭いがほんのり香った。  カイラはヴェルトの屹立に鼻をつけ、深呼吸しながら自身の肉茎を覆う金属のチューブへ手を伸ばす。  そして、爪を立てて刺激し始める。 (僕も勃起してるのに……っ)  カッ、カッ……カリカリ (触りたいのに……っ)  カッ、カッ、カリカリカリ (僕だって、自分で扱いて……ピュッピューって……射精、したいのに……)  カッカッカッカッ…… (何も……できないっ!)  カリカリカリカリカリカリカリカリ!  息を荒くし肉棒の裏筋を舌でなぞりながら、夢中で貞操帯越しに自身を慰める。 「……えっ? あの……カイラ君?」 (おちんちん痛い……苦しい……!)  カリカリカリカリカリカリカリカリ! 「カイラ君? カイラ君てば」  カイラは排尿用の穴から直に自身の欲望の先端に触れる。  既に蜜を湛えていた先端部分を刺激すると、水音が鳴り始める。 (……あっ♡ 少しだけなら……触れるっ♡♡)  クチュクチュクチュクチュ…… 「おーい? カイラ君」 (気持ちいいっ♡ きもちい……っ♡♡) 「カーイラ!」 「うわぁあぁあぁあっ!?」  ようやくヴェルトの声に気付いたカイラは大声を上げて勢い良く起き上がった。  目を白黒させながらも甘い息を吐き続けるカイラの顔を見て下卑た笑いを浮かべるヴェルト。 「カイラ君……朝から盛って可愛いねぇ?」 「~~~~ッッ!」  カイラは茹で上がったタコのように顔を真っ赤にして、要領を得ない言い訳を始める。 「だって、だって! 僕も朝勃ちしてるのに勃起も射精もできなくて……! でも、ヴェルトさんは気持ち良く朝勃ちしてて……っ! ズルいズルい! ズルいです!」 「だから僕のを見ながら貞操帯越しに触ってたんだ? カリカリって音こっちにまで聞こえてきたよ」  「ヴェルトさん!」とカイラは誠実に願う。 「恥を忍んでお願いします! 射精させてください!」 「ふっ……ふふふ」  真剣な面持ちで願われるので、ヴェルトは可笑しくて失笑してしまう。 「何笑ってんですかぁ!」  カイラは泣き始めてしまう。 「だって……あまりにも必死なんだもん。そんなに射精したいの」 「必死にもなりますよ! ……ヴェルトさん。貞操帯外して射精させてください」 「う~~ん……」  と唸った後、ヴェルトはにこやかに笑って「ダメだね」と冷笑しながら告げた。 「ティニーがお飾りだって認めるまで許さないよ」 「そ、そんな……! おちんちん辛いんです! タマタマも疼いて切なくて……! せめて、勃起だけでも許してください! なんでも……なんでもしますから!」  と言いながら四つん這いになり、媚びるようにお尻を左右にフリフリと振り始める。 「うーん、なんでもしてくれるの? ひとつやってほしい事があるんだけど」 「はいっ♡ 僕にできる事ならなんでも……♡」  カイラは頬を上気させ目を期待で潤ませながらヴェルトを見上げる。 「貞操帯外さないで我慢してほしいな」 「え……っ?」  絶望の表情を浮かべたのを見て、ヴェルトの中にある加虐性が更に刺激された。 「ほら、まだ起きるには早い時間だし2度寝しちゃおうよ」  と言いながらヴェルトは体を引き寄せカイラを無理やり布団の中へ入らせる。 「待って……待って♡ ヴェルトさん♡」  ヴェルトに抵抗できず、カイラは彼に抱き寄せられる。 「ほら、僕が抱き締めててあげるからさ。我慢しよう? ね? 我慢、我慢……」  と言い、ヴェルトはすぐに寝息を立て始めてしまった。 「ヴェルトさん……ヴェルトさんっ♡」  当然眠れる訳もなく、カイラは甘い息を吐き身を小刻みに震わせながら起床時間をひたすら待ち続けたのだった。

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