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擬似

 禁欲を強いられてから4日目の昼。自室のソファにゆったりと腰を下ろしていたカイラは、魔導ラジオのスイッチを切った。 (なんか……今日の白百合の姫と黒薔薇の騎士、凄くエッチだったなぁ)  白百合の姫と黒薔薇の騎士とは、ラジオにて放送されている恋愛ドラマである。  身分違いの2人が徐々に距離を縮めてゆき……そしてついに、今回の放送で体を重ねる事となったのだ。 (どうしよう……またムラムラしてきちゃった)  自身の欲望がムクムクと膨らむのを感じて悩ましげな溜息を吐き、そっと手を下半身へ。 (ヴェルトさん、冒険仲間に応援を頼まれたって言って1人で討伐に行っちゃうしなぁ……)  カイラは荒い息を吐き始める。頬を紅潮させ、エメラルドの瞳がトロンととろける。 (我慢……できない)  カイラは立ち上がり、ひょこひょこと歩きながら同じ階にある寝室へ向かう。  寝室で衣服を脱ぎ、貞操帯のみの姿となったカイラはベッドへ倒れ込む。 (……ヴェルトさんの匂いがする)  そして、右手を貞操帯へ伸ばした。 「……痛い」  小さな檻の中でティニーが健気に勃とうとしてしまい、苦しいのだ。  カリカリ……カッ、カッ  竿を覆う金属製のチューブに爪を立てる。振動が少しだけ肉茎に伝わって、微弱な快感を得られるのだ。 (オナニーしたい……)  カッカッ、カリカリカリ…… (おちんちんシコシコして……)  カリカリカリ……カッ、カッ、カッ、カッ…… (ビューって出して気持ちよくなりたい……)  自慰がしたい。年頃の少年なら誰でも持つであろう願いを、貞操帯が冷酷に阻む。  自慰はおろか勃起もできないし、自分の欲望に直に触れることさえ叶わぬのだ。  貞操帯の先端から蜜が一滴落ちた。 (また汚しちゃった……後でシーツ替えないと)  もう限界だとベッドから起き上がり、クローゼットの奥にしまっておいた箱を開ける。  靴箱程度のサイズの箱には、この前作った特製のディルドが眠っていた。  貞操帯を外せない今、カイラはこれで自身の後孔を慰める事すらできない。  それなのに取り出した理由は…… 「『ウォーター』」  ディルドの根本部分を貞操帯に当てがい、粘性のある水を纏った手で扱き始める。  ヴェルトの張形を使用した擬似オナニーだ。  カイラには似つかわしくない屹立を、自分のモノと見立てて慰める。 (ふにゃふにゃしてるけど……凄い……ゾクゾクする……)  ふと、カイラは初夜の事を思い出す。 (そういえばヴェルトさん、初めてのセックスで失敗した後『収まらないからカイラ君見ながら1人でシていい?』なんて聞いてきて……)  カイラの上に覆い被さり、自身を高め始めたのだった。  最初はゆっくりだった呼吸が、次第に早く浅くなってゆき……最後には身を震わせて、カイラの腹へ白濁をぶっかけたのだった。 (こんなおちんちんで射精したら気持ち良いだろうなぁ……ひとコキの距離が長いし、精液が登って射精するまでの距離ももちろん長い訳だし、イったらこんなおっきいのがビッコンビッコンって跳ねて……) 「あっ……♡」  全身を包んだ甘い感覚にカイラは耐えきれず声を上げた。 「ヴェルトさんばっかり……ズルい……ッ! いつでも勃起できるし、オナニーできるし、セックスだってできるのに……!」  更に手を速める。 「僕は1人じゃ触る事もできないのに……ッ! 僕もティニー触りたいっ!」  カイラはハッとする。 「ぼ、僕もティニーって言っちゃった……物凄くちっちゃいって……」  カイラの中で目覚め始めた被虐性がくすぐられた。 「~~~~ッ♡」  更にカイラは乱暴に屹立を扱き始める。 「イくっ! イくぅ……っ!」    次第に高められてゆく。  呼吸が更に浅く熱くなり、射精の事しか頭に無くなってゆく。 「イっ……くぅ……!」  もちろん、偽物を扱いたところで射精などできる訳がない。  そもそも自慰封印の呪いというふざけているとしか考えられない呪いをかけられているのだ。どのような間違いがあっても、カイラは自分自身の手で欲を発散できない。  肉茎が暴れ続ける。  睾丸が切なく疼き続ける。  先走りでいくつものシミをシーツに作ってしまった。  カイラは深い溜息を吐きながらベッドに身を任せる。 「射精……したい」  という懇願が空に溶け、カイラはゆっくりと目を閉じたのだ。

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