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ノラ夢魔と飼い夢魔
ダーティが去った後の客室に現れた黒い影。無数のコウモリが羽音を立てながら虚空をクルクルと舞い、やがてそれが人の形を取り始める。
黒髪に黒目の、劣情を煽るようなコスチュームを見に纏った夢魔……ミキである。
「よ、雑巾1号 おっひさ~♡ 相変わらず無様だねぇ」
貞操具以外の物を全て剥がれ大の字で寝転がされ、尻にオモチャを詰められたディックは顔を真っ赤にする。
「ア、アンタ……! なんでこんな時に……!」
「こんな時だからだよ。誰かに見られてる方が気持ち良いだろ? 喜べ、主人が帰ってくるまでここでお前のなっさけねー姿見ててやるわ」
「帰ってください」
ミキの言葉が終わった途端にディックは冷たい声で願った。
「はぁ? 俺にそんな口聞いて良いの?」
後輩の失礼な態度にむしろミキはニヤリと笑う。下衆な笑い方ですら端正な顔立ちの彼には良く似合う。
「アンタにこんな姿見られたぐぅうぅっ♡♡」
話の途中でディックは腰を少々浮かし身を捩らせる。
「おっ、第一波始まったか」
ミキはベッド前に椅子を持って来て腰掛け、持参したスナック菓子を食べ始める。まるで野球観戦をする子供だ。
「ん゛お゛っ♡♡ あっ、イグぅ……ッ♡♡♡」
逃れられぬ快楽に早々にディックは気を逸した。
「あーあ、ホントお前おもしれーなぁ。イくのが早過ぎんだよこのザコが。マゾチンポからカウパーだだ漏れしてんのもよー見えるわ」
「あ゛っ♡ まだっ、イっでる……のにぃッ♡♡ お゛っ♡ どっ♡ 止まっ……ぐっ♡♡」
善がり続けるディックを見下ろしながら、ミキはニヤニヤ笑い続ける。
「はぁっ……はぁ……っ♡」
第一波が止まる頃には体と脳が快感でとろけ切り、ディックは弱々しく喘ぎ続ける。
「はぁ……数年前まではまさかお前がなぁ。メスマゾ堕ちさせられるとは思ってもなかったわ」
息を整えているディックの顔を見据えながらミキは話し続ける。
「お前がノラだった時さ。ずっとそこらの女の家に忍び込んで口説いてただろーが。サキュバスからも評判だったろ? ディックは抱くのが上手いって」
「……正直言って、あの頃がふと懐かしくなります」
頬を紅潮させながらディックは呟いた。
「だが、あの頃より今の方がずっと楽しい」
それを聞いたミキは吹き出した。
「《《楽しい》》と来たか、お前らしくない。ガキみてーな言い方だな」
「楽しい方を選ぶのが俺ら夢魔の生き方でしょう」
「違いねーな」とゆっくり立ち上がり、ディックの蕾を広げている張形を一気に引っこ抜く。
「ん゛っ♡♡♡」
声を上げ一瞬だけ身を強張らせたディックを気にも留めず、ミキはオモチャを眺め続ける。
「あ~~……やっぱそーだわ。コレ、俺の後輩が作ったやつだ」
紫色のディルド。その凹凸を指でなぞりながらミキは続ける。
「アイツ、男性器に対する……憧れ? が強くてだな? ほらここ見てみ? この反り具合! まさに理想のってまた動き出したわ挿れなきゃ」
ズボォォッ!! と屹立を一気に元の場所へ捩じ込んだ。
「ん゛お゛ぉぉぉッ!?」
その衝撃でディックは精をバスタオルに滴らせた。
「あ゛っ♡ しゃせ……っ、出て……お゛っ♡♡」
「これっぽっちの射精で悦ぶなんて……哀れだなぁ、可哀想過ぎて笑えてくるわ」
第一波の倍ほどの時間が経った頃、ようやく第二波が収まった。
「はぁ……も、無理……っ♡」
常に鋭い光を宿す瞳はぼんやりとしており、快楽で頭がいっぱいなのが容易に窺える。
「お前の主人、ダーティ……だっけ? 正直言って俺アイツきらーい。顔と歌声は良いけど性格最悪なんだもーん」
「……性格について、否定はしねえ」
「それに……エディだったな。やけに『ですわ~』とか『うふふ~』とかバカ丁寧な言葉使ってた奴」
「あの女の演技さぁ」とミキは頭を掻きながら続ける。
「俺にゃどうも演技とは思えねーんだな。まるで____」
「お゛っ、お゛っ、お゛っ♡ お゛っ♡♡」
「またか……碌に話せねえなぁ」
善がるディックを内心哀れみながらミキは溜息を吐いた。
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