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支配する夢魔
(夜風が気持ち良い)
レザーのとある家の屋根に腰を下ろしたミキが目を瞑り清風を身に受けている。
……全てが順調だ。
呪いをかけたカイラを中心に輪が広がっている。
剣士ヴェルト。
死刑執行人兼拷問官ハルキオン・ブラッドムーン。
魔法学校の教師ガゼリオ。
高名な魔導士マティアス・マジェスティック。
演奏家ダーティとその飼い夢魔ディック。
ディックの獲物であるダーティ以外から精気を集めているミキは、更に夢魔としての力を高めていた。
「そしてまたあの6人との繋がりを持つ人間達が巻き込まれてゆく……芋づる式さまさまだ。これでまた後輩に分ける分の精気が手に入りやすくなる」
ミキは上機嫌に鼻歌を歌い始めた。
ディックがレザーに戻って来た際に聞かせてもらった歌。これは地獄の火クラブで彼が最初に歌ったのと同じ曲。
「『もっと激しく淫れてみせろ』ねぇ……どっからそんな言葉でてくるのやら」
曲のつくり方を教えてもらえる程には愛されているようだが……ミキはダーティの事を良く思っていない。
人間に飼い慣らされる事を選ぶ夢魔が年々増え続けている最中、ミキやディックは本来の夢魔の在り方を選び続けていた。
つまり人間を誘惑、支配し、性交に及ぶ事で精気を得るという支配者としての在り方。
だが……ディックは変わってしまった。貞操具を着ける事で愛しい彼に本能を差し出し、後孔を穿たれ悦ぶだけの愛玩動物と成り下がった。
そのきっかけを作ったダーティという男の存在……後輩を奪った男の存在が、ミキにとってはあまり面白くない。
あの自信に満ち足りた端正な顔立ちがぐちゃぐちゃになるまで犯してやりたい衝動に駆られるが、奴のバックについているディックが許さないだろう。
「はぁ……誰かダーティの事襲ってくんねーかなぁ」
ミキのぼやきが星屑となり、ミッドナイトブルーの空に散らばった。
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