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一方ガゼリオは…

 2年生の学年主任から呼び出されたレオは、己の行動を振り返りながら応接室のソファに恐る恐る腰掛けた。  上司からの呼び出し。自分は何かまずい事をやったに違いないとレオは冷や汗を流す。 「ごめんなさいね、忙しいのに呼び出してしまって」  スーツを身に纏った上品な印象の女教師はレオの対面に腰掛けて話し始めた。  声の調子から、どうやら怒ってはいないようだとレオは心中で胸を撫で下ろす。  だが、悩ましげな面持ちをしている為、恐らく良い知らせではないのだろう。 「あの、ガゼリオ先生の事なんだけど」 (ドキッ!!)  ガゼリオとは、学校では互いに先生と呼び合うような絶妙な距離感を保っているものの、仕事が終われば互いに呼び捨てするような仲だった。  健全な関係。どの世界にもあるような、ありふれた友人関係。  それが、夢魔の呪いをきっかけに変わってしまった。未だに友人という関係のまま、2人は口付けを交わし、火照る体を慰め合い、性交の約束を誓った。  男同士の恋愛……周りの人間からどれほど嗤われ、非難されるだろう。  しかしガゼリオと一緒ならば、どれほど悪く言われようと怖くない。と己の男色趣味を初めて彼から認められたレオは思う。  だが……流石に職場にバレるのはまずい。仕事に支障が出るのは火を見るより明らかである。 「ガゼリオ先生が……どうしました?」  レオは引き攣った笑みを浮かべた。 「最近ね、様子がおかしいのよ。なんだかこう……具合が悪そうというか、熱っぽいというか」 「はぁ」  ガゼリオの不調の原因を知っているレオはあやふやな返事をした。 「本人に聞いてみても平気だって言うし。レオ先生はガゼリオ先生とよく話してるでしょう? 何か健康面で不安があるとか聞いてないかしら」 「いや、俺は全く、何も」  上司は「そう」と深い溜息を吐いた。 「でも、俺ガゼリオと隣の席なんで。ガゼリオの様子をもう少し注意深く見てみます」 「えぇ、お願いできるかしら?」    *** 「……って、上司から言われた」 「それ今のタイミングで言う事か?」  レオの自宅にある狭いベッドの上にて。あっけらかんとしているレオを、ガゼリオは呆れ顔で見つめた。  2人は今、生まれたままの姿となり互いの顔が見えるように横向けになっている。 「だって言うタイミングが無かったんだもん。家に帰るなりパンツん中ぐっしょぐしょにしながらガゼリオが迫ってくるから」 「もう少し言い方考えらんねーのかお前は」 「でも事実だろ」 「お前……モテねーだろ」 「それ悪口のつもりか? 俺は俺自身が好きになった人だけにモテればいいの!」  とガゼリオをより強く抱擁するレオの姿は、まるでクマのぬいぐるみを抱き締める少女のようだ。  より体が密着した事により、その無邪気さに似つかわしくないモノが大腿に押し当てられる。 「お、おい……押し付けんな!」 「仕方ないだろ? 生理現象なんだから」  ガゼリオはレオをキッと睨みながら上半身を起こす。 「このヤロー……人が苦しんでる中、気持ち良さそうにおっ勃たせやがって……!!」  そして布団を引き剥がし、奴の業物(わざもの)を見下ろした。 「……なんか、熱の籠った目で見られると……恥ずかしいな」  はにかんだレオの怒張。コレを飲み込んだら、どれほど気持ち良いだろう。  既に我慢の限界を迎えていたガゼリオは、少し想像しただけで体を更に火照らせ無意識のうちにレオの屹立を握った。 「あっ、待____」  レオの静止の言葉を遮るように、ガゼリオは天を穿つ逸品を扱き始める。 「ちょ、ガゼリ、オ、激し過ぎ……」  慣れた手つきで夢中で肉棒を扱くガゼリオの下半身に、レオは手を伸ばす。そして風船のように膨らんだ睾丸を包み込む。 「……っ!」  全ての刺激に弱くなってしまったガゼリオの体はそれだけで悦び、レオのリードを許してしまう。 「ちょっと触っただけでネコらしくなるの可愛いよな」 「やめ……チンコ、痛い……」 「あー、勃ったか?」  レオはガゼリオの背に手を回して、 「じゃこっち触れば収まるかな」  指を1本ガゼリオの後孔へ挿入した。 「あ……!」  期待で体をぞくぞくと震わせ、ガゼリオはレオの大きな体に腕を回した。  体が自分は雌だと勘違いしたのか。貞操帯いっぱいに膨らんだ陰茎が急速に(しぼ)んでゆく。 「なぁ、ガゼリオ」  指でガゼリオのナカを掻き回しながらレオは話し始める。 「……ん」 「ヤりたい」 「……俺も」 「もう指1本じゃ満足できねーよな?」 「うん……」 「俺もさ、もう我慢できなくなってる。ガゼリオが家に来た日は、マスかかねーと気が収まらねーんだ」 「は? 毎回……手や口で、シてやってるだろ」 「そーなんだけどさぁ。寝ようと思うと、ガゼリオの残り香でムラっときてしまって」  目の前にいる男の性欲の強さを知り不安になった途端、快楽の波がガゼリオを襲う。 「……っ。レオ、俺、もう……」  情欲に潤んだ同僚の唇を無言で奪い、レオは彼が最も悦ぶ部分を指の腹で円を描くよう刺激してやる。 「はふぅっ♡ んっ、んぅ……」  無理やり舌を捩じ込まれたガゼリオの息遣いに己の欲望が更に強張るのを感じ、レオは眉根に皺を寄せた。 「ふっ、う……!」  ガゼリオは身を強張らせた後、ゆっくりと体を弛緩させた。 「まずは1回。上手にイけたな」  2回目の絶頂を迎えさせるために手を休めず、背に回していた手でガゼリオの頭を撫でる。  大きな手に包まれて、ガゼリオはこれ以上ない安心感を覚えた。 「セックスできるようになるまで時間空くからさ。今のうちに当日どうするか考えよーぜ」  まるでグループ内で何をして遊ぶか考える少年のような口調でレオは話し続ける。 「まずはホテル取んなきゃな。ここじゃ狭過ぎるし。それからホテルん中で、2人で風呂入ったり、飯食ったりしてゆったり過ごして……ガゼリオの貞操帯が外れたら、すぐにチンコ扱いてやる」  気持ち良いぞ? とレオは更に続ける。 「ウォーターの魔法使ってから、ゆっくりと扱いてやるからな。全体を軽く優しく撫でて、イきそうになったら気持ち良い所を重点的に扱いてやるよ。なぁ、ガゼリオってどこ触られんの好き?」 「はぁ……っ、俺は……カリ……とか」 「あー、気持ち良いよな。分かった。カリ首いっぱい可愛がって、一滴残らず搾り出してやる」 「あ……うっ♡」 「2回目。……前が満足したら、次は後ろ。ガゼリオの腹がザーメンでパンパンになるまでヤろうな」 「うん……楽しみに、してる」  ガゼリオはレオに口付けを強請った。  レオはそのような彼を更に愛おしく思いながら、望みを叶えてあげたのだ。    ***  レオが住む集合住宅の屋上にて。 「カイラの事も何とかしねーとだが……ガゼリオの事も何とかしねーとなぁ。このままじゃ何も起きず1ヶ月過ぎちまうぞ」  いつもの扇状的なコスチュームを身に纏ったミキが大義そうに呟いた。 「うーん……夢と夢を合体させれば……それか、カイラが学校に行く用事を作らせれば……」  2人の男が情を交わしている中、元凶の夢魔は1人で何か企て始めたのだった。

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