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予定その1
女王である三日月を讃えるように星々が瞬いている。
人気 の無い通りを歩きながら、レオは自分と並行して歩くガゼリオに話しかけた。
「ガゼリオ、無事に魔法祭終わったな。……女装コンテスト、フェリンの圧勝だったな」
ガゼリオとレオのクラスの代表者でどちらが多く票を集められるかという賭けをしていた2人。結果はガゼリオの勝利だったようだ。
「フェリンはうちのクラスの姫だからな。今頃褒美のステーキでも頬張ってるだろ」
「ステーキかぁ、友達が金出すんだろ? よーやったな」
「実はさ。他の生徒から聞いたんだが……ステーキ奢るって提案したディアカルが、ガチでフェリンの事好きらしい」
「うっそマジで!?」
生徒の恋バナに、まるで女学生のように盛り上がる先生2人。
「もしかしたらデートどころか、どっかでよろしくヤってたりしてな」
ガゼリオの軽口にレオは「それはねーよ」と笑った。
「アイツらまだ学生なんだぜ? まだセックスなんてヤる訳ねーって」
「そっか? ……そっか」
それくらいの時期には養父に体を弄ばれていたガゼリオは認知の歪みを自覚し、自分に言い聞かせるように「そっか」と何度か呟いた。
目的地……ホテルが近付くにつれて、2人は段々と口数が減った。
心臓が高鳴る。「あぁ、今から俺はコイツを抱くんだ」「コイツに抱かれるんだ」という実感が沸々と湧く。
人目が無いのを良い事に、レオはガゼリオの手を握った。
「……っ」
もはや全身性感帯と化したガゼリオの体が甘く反応する。ガゼリオは繋がれた手を恋人繋ぎへと握りなおし、更に力を込めた。
レオはホテルの前で立ち止まり、田舎者の癖でつい建物を見上げながらガゼリオに「ここ」と話しかけた。
緊張のあまり声が上擦っているレオを可愛らしく思いながら、ガゼリオは「うん」と頷き共にホテルに入った。
無事にチェックインし、2人は部屋へ向かうべく廊下を渡る。
「なんか……黒いな」
廊下を見回しながらガゼリオは呟いた。
ガゼリオの言う通り、天井と壁が黒で統一され、床にはボルドーの絨毯が敷かれているので、まるでドラキュラ城のような退廃的な雰囲気を感じられる。
「そーゆーコンセプト? のホテルらしい」
「……ふーん?」
部屋の前に着いた2人は、緊張した面持ちのまま扉を開いた。その先には……廊下と同じく黒を基調とした部屋が広がっていた。
真っ黒な天井に、光の当たり具合で見えたり消えたりするダマスク柄が美しい壁。裸足で歩いたら気持ち良さそうな、フワフワなダークパープルの絨毯が敷かれている。
4人で食事が摂れるテーブルセットに、広々とした浴槽、クローゼット、ソファなどの家具類も全て「黒」と「ロココ調」のコンセプトで統一されている。
肝心のベッドももちろん黒で、大男が3人寝転がっても余裕がありそうな程大きい。シーツや掛け布団カバー、クッションの全てで壁と同じ柄が使用されており、相当なこだわりを感じさせる。
そして今から踊る演者達を照らすように、天井からぶら下がったシャンデリアがベッドという名のステージへ柔らかな光を降らせているのだ。
「わぁ~! ひろ~い!」
ラブホテルに初めて来た人間が初めて言う言葉ナンバーワンの言葉を嬉々として叫び、レオは早速ルームツアーを始める。
「この部屋な。ガゼリオが好きそうな感じを選んだんだよ。えーと……なんだっけ」
「ゴシック」
「そう、ゴシック! こーゆーの好きだろ? テンション上がった?」
「上がった」
「やった! ……それで見てみろよ。ベッドに花びら散らばってんだよ。まさに『さぁここでヤっちゃってくださいっ!』て感じだよな」
「だな」
「あとな、ルームサービスもあんだよ。聞いたんだけどさ、ここの料理美味いんだって。後で頼もーぜ!」
「うん。……てか、どこでそんな情報聞いたんだよ」
「ゲイバー」
「マジかよ」
「だけどその前に風呂かなぁ、風呂。バルコニーで会った後、着ぐるみ着て走ったり踊ったりしたからさぁ。汗だくなんだよね。ガゼリオも入るか?」
「うん」
先程までと打って変わって饒舌 となったレオに圧倒され、言われるがままにレオと入浴する事になったガゼリオ。
2人の夜はまだまだ長そうだ……
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