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1−12【陽&星☘️】玲陽式・尊厳保持大作戦!
<概要>
・リクエスト:非公開
・カップリング:玲陽&犀星
・テイスト:ギャグ! 下ネタOK!
・その他:犀星に看護されつつ、恥ずかしくてきゃーきゃー言ってる玲陽が可愛い話!
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「……っ、あ……」
重たい身体をわずかに持ち上げたところで、激痛が腹の奥から押し寄せた。思わず短く声が漏れ、額ににじんだ汗が頬を伝う。
「陽、動かないで」
すぐさま布越しに手が添えられ、玲陽はしぶしぶと背を牀に横たえた。犀星はふわりと微笑み、濡らした布で玲陽の手を優しく拭った。
「……お手間を取らせて申し訳ありません」
「気にするな」
犀星は一切の嫌味も躊躇も見せず、まるで茶を淹れるような自然さで玲陽の世話を焼いていた。衣の整え、食事の介助、排泄の介助――
そう、そこだ。
問題は、そこだ。
世話を焼かれるたびに、玲陽の尊厳は地の底に沈む。特に“あれ”だ。“下の世話”だ。
どれほど犀星を信頼していようと、さすがにこれは耐えがたい。
助け出された当初は、それどころではなかったが、体調が落ち着くにつれて、一気に羞恥心が騒ぎ始めた。
「星……」
「うん?」
「……なんとか、自分で、できないものでしょうか」
「それは……難しい。断腸の傷だ。立つどころか、座るのも命取りになる」
「それでも……このままでは、私の自我が死にます」
「……え?」
犀星はやや本気で心配そうに眉を寄せた。まさかの発言だったらしい。
玲陽は片手を握りしめ、真剣な面持ちで言った。
「このままでは、いずれ私は、あなたの顔を見られなくなります」
「それは嫌だ」
「ですから、なんとか……工夫を!」
その日の午後、玲陽は牀の上で考えに考え抜いた。そして――
「星……相談が……」
「何でも」
「……道具を、使いたいのです」
「道具……?」
犀星が思わず小首を傾げた。玲陽の顔は真剣そのものだ。
「紐と滑車と……ああ、あの桶を借ります。あと布と棒があれば……」
「まさか、天井から吊るすつもりか?」
「簡易の滑降式です。ゆるやかに傾斜をつけ、重力を利用して排泄物を……」
「やめておけ。物理的に無理がある。それに……音、部屋の外に聞こえると思うぞ」
「……!」
思いもよらぬ盲点に、玲陽は目を見開いた。
「では、牀の脇に、屏風で囲った小空間を作り、私がそこへ這って……!」
「駄目だ。動くのは危ない」
犀星は真顔だった。それが玲陽には余計に恥ずかしい。
「せめて……せめて、目隠しをしていただけませんか。星に、ではなく、私に。そうすれば、見られている実感が薄れ……」
「それは構わないが、目隠しすると不安にならないか?」
「目を瞑るよりましです!」
犀星は真剣に唸った。
玲陽の気持ちはわからないではないが、自分が気にしていないのだから、されるに任せてくれて良いのに――
その夜、玲陽は白い布を目にかけ、震えながら犀星の介助を受けた。
が、
「きゃっ!? そ、そこ、掴まないでくださいっ!」
「すまない、指が滑って……」
「うわ! 聞こえないようにって言ったのに!」
「目隠しで音は防げない」
こうして、「目隠し作戦」はわずか二日で終了した。
次なる策――「訓練された介助人を雇う」は、犀星の一言で却下された。
「陽の体を見ていいのは、俺だけだろうが……」
今更、何を言わせるのだ、と犀星は一切とりあわあなかった。
「なぁ、陽」
「はい……」
犀星は、その静かな声のまま、
「どんなに翻弄されても、俺は楽しい」
「…………」
「陽が、生きて、こうして、俺のそばにいる。それが全てだ。それに……」
犀星はそっと、耳元に唇を寄せた。
「将来、俺に何かあった時は、陽に任せる。それで帳消しってことにしておいてくれ」
玲陽はきょとんとした。目を瞬き、頬を染め、そして――
「……あなたって人は」
「ダメか?」
玲陽は、優しく笑った。
「ダメです!」
てっきり口説き落とせた、と思っていた犀星の顔が固まった。
「それとこれとは話が別です! あなたの世話はいくらでもしますが、私のはダメです!」
「おまえ、言ってることがめちゃくちゃ……」
「いいんです!」
ガラッと、引き戸が開いて、
「うるさい! 何時だと思ってる!」
涼景の乱入で、さらにその場の喧騒は高まった。
たとえ羞恥にまみれた日々でも、あの孤独な砦の日々より、はるかにマシ。
玲陽は怒りながら、こっそりと笑っていた。
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どんなに綺麗な人でも、トイレには行くんです。
寝たきりの儚い麗人、だって、出すものは出さなきゃ死んじゃうんです。
そんな当たり前のことを当たり前に書くのは、とことん、新月っぽいんです(笑)
(恵)
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