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1−12【陽×星☘️】あの話、どうなった?

<概要> ・リクエスト:リクエストします!様 ・カップリング:玲陽&犀星 ・テイスト:ギャグで!(ちょっとエロが嬉しい) ・その他:そういや、あそこの怪我ってどうなった? ―――――――――――――――――――― 「……あの、兄様」  もぞもぞと動く褥から、まるでモグラのように目だけ出した玲陽が、不安げに犀星を見上げた。  室内には薬草のにおいと、ぐつぐつ煮える薬鍋の音。犀星は火加減を調整しながら、器の縁を拭いていた。いかにも慣れた手つきで、いつものこと、という風情。  だが――その合間にふと向けられた視線が、とんでもなく優しかった。  その笑顔が、優しすぎて、逆に腹が立つ。 (まずい……甘やかされてる……!)  玲陽は心の中で頭を抱えた。こんな時だけ乙女の気持ちになるのがさらに悔しい。 「……向こう向いててくれませんか」  唐突に口を開いた玲陽に、犀星は少しだけ眉を上げた。が、すぐに首をかしげた。 「顔を見て話すのが、恥ずかしいんです……!」 「今さら?」 「今さらも何も、今は今です!!」  ぐぬぬぬぬ、と声に出しかけたのを飲み込み、玲陽は褥の中に潜り込む。顔だけ出すというスタイルが、まるで夜の砂漠に潜む小動物のようで、犀星はちょっと笑った。 「わかった。俺はこれを見つめているから、背中に向かって話せ」  器の中のぐつぐつに視線を落とし、まじめに構える犀星。 (ああもう……こういうとこなんです! こういうとこが安心しちゃうですよ!!)  玲陽は褥の中で悶絶した。なぜ自分はこの男にだけ、こんなに心の臓が弱いのか。  少し膨らんだ肩越しに、背中を見つめながら、玲陽はようやく言葉を吐き出す決意を固めた。 「……あのですね、聞きたいことがあるんです」 「なんでもどうぞ」  その即答が怖い! 犀星は“なんでも”を本当に“なんでも”答えてしまうから怖いのだ。 「……その……」  しどろもどろになる玲陽。自分の声が蚊の羽音にしか聞こえない。 「私の体、色々と……まあ、痛んでいたじゃないですか」 「うん」 「で、あの、こう……腫瘍というか、水ぶくれみたいなのが、えっと、できてて……」 「うん?」 「で、それ潰したら、ものすごい臭いの膿が出て……その、ええと、そのあたりってつまり……のことでして……」  コポポポポ、と鍋の中の音が妙に静かになった気がした。  そして、犀星の手が止まった。 「……陰茎のことか?」  ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!  玲陽は褥の中で爆発した。顔面はトマトを煮詰めたように真っ赤、眼球からは涙がにじみ、鼓膜は自分の心臓音で震えていた。 「ち、ちがっ……いや、ちがわないんですけど、でも今はちがってほしかった!」 「治療したのかって聞きたいんだな?」  犀星は、薬をかき混ぜながら、ごく自然に続けた。 「俺が……見たか、触ったか、聞きたいと?」  沈黙。  その沈黙が何よりの答えだった。 「――全部、忘れてください」  蚊の羽音よりも細い声が、褥の奥から漏れた。 「お願いです。星。なかったことにしてください。そうでないと、恥ずかしくて……生きていけません……」  犀星はしばらく考えたふうにしてから、ぼそっと言った。 「……じゃあ、次にそうする時までは、忘れておく」 「つ、次!? 再発は、しないんですよね!? ね!?!?」  玲陽の声が裏返って高くなる。もはや小鳥の鳴き声。  犀星は薬鍋のふちに肘をかけて、いたずらっぽく笑った。 「そうだな。膿を“吸い出す”必要はないが、今度は別のものを”飲ませて”もらおうか――」 「うわあああああああああああああっ!!!」  玲陽の悲鳴が、部屋の壁を震わせた。  バタバタと廊下を走る音がして、引き戸がガラッと開く。 「星、おまえ、陽に何をした!!」  怒鳴り声と共に登場したのは、お約束、涼景である。 「俺は何もしていない」  犀星は、真顔で言った。  その背後――褥をすっぽり頭までかぶった玲陽が、塊になって震えていた。 「なにもしないで、こうなるわけがないだろう!!」 「“触った”って言っただけだ」 「何を!?」 「陽の……」 「やめてぇぇぇぇ!!!」  轟く、玲陽の絶叫。  玲陽は褥の中でガタガタ震えながら、 「お願いです、みんな何も言わないで!! これ以上何も言わないで!!) (誰も私の性器に触れないで!!!)  だが――この話はまだ終わらない。  その日の夜、犀星はいつもよりふわふわの毛氈を持ち出して、玲陽の枕元に座り込んだ。茶を飲みつつ、しれっと言う。 「しかし、お前も大きくなったな」 「やめて!! 大きくなったとか言わないで!!」 「背中の話だ」 「ごめんなさい、早とちりでした」 「あと、あの薬膏は涼景が調合した」 「え、あ、それは、ありがたいです……っていうか、塗ったの誰ですか!?」 「俺」 「結局、星じゃないですかぁ!!」  こうして、夜は静かに――騒がしく――ふけていった。 (完) ―――――――――――――――――――― いやぁ、これは長く歴史に残るネタだと思うんですよね。 本編でも、医療行為ではありますが、サラッと星が勃起してましたし、今後もそういうシーン(治療じゃなくて情交として)が出てくるのではと期待。 期待、というか、出てますよ、ご安心ください(汗)。 (恵)

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