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二次 秘夜一味【星&陽&涼&蓮&東☘️】十年目の口付け騒動
<概要>
・リクエスト:非公開
・カップリング:わいわいみんなで。
・テイスト:ギャグ。おもいっきり振り切れて!
・その他:それぞれに言い訳をする星と涼景、嫉妬で暴走する陽と蓮章のドタバタ。
――――――――――――――――――――
犀星の邸宅の居間。いつもの顔ぶれと、酒と、阿呆の気配が満ちていた。
「この酒、やたらと甘ったるいぞ……東雨、何か入れただろ」
「涼景様がしょっちゅう、若様若様ってうるさいから、せめて口の中くらい甘くしておこうかと」
東雨が涼景の杯に梅蜜を注ぎながら笑った。夜は更け、涼やかな風が欄間から忍び込んでいる。酒席の卓には珍しく揃っていた。犀星、涼景、玲陽、蓮章、東雨、そして――全員の胃を痛める結果となる一言を、涼景が、唐突に言い放った。
「……そういえば、若かったなあ……十年前」
「ほう、どのあたりが?」
蓮章が涼しげに問うたが、それは不吉の鐘の音だった。
「うん? あの夜――俺、星に口付けて……」
静寂。
虫の音が止んだ。
風が止んだ。
杯が、卓に落ちた音がしたのは、玲陽の震える手によるものだった。
「――は?」
「いや、いやいやいやいやいや!」
玲陽が立ち上がった。目が据わっている。
「兄様と、口付けを!? いつ!? どこで!? 詳細に!!」
「おい待て落ち着け陽! あれはその……酔ってて……若気の至りというか……つまり……酒席の勢いで――」
「つまり、意識がはっきりしていたと?」
「いやそれは……あの時は……星も酔ってたし、抵抗もしなかったというか――」
ここでとうとう沈黙を守っていた犀星が、唐突に席を立った。何も言わず、廊下の向こうへ去っていく。
「あああああああああああああああああ!!! 兄様ァァァァ!! 逃げるなああああ!!」
「陽! 落ち着け! そんなに怒ることじゃ――」
「怒ってなどいませんッ! 私さえ、兄様と口付けなどしたこともないというのに! 呪いがあるというのに! それを涼景様が先に済ませているというのが……ッ!」
「それは――その――……仕方なかったんだ……当時は……」
「口付けを返せ!! 兄様の口付けを今すぐ返せッッ!!」
「いや返すって何!? 物理的にどう返せと!? ていうか、お前に口付けされたら俺死ぬんじゃ!? 魂が引き抜かれるって!!」
「喰らってあげますッ!!」
玲陽が叫びながら走り出す。涼景、全力で逃げる。
「――へぇ」
蓮章がふらりと立ち上がる。杯を片手に、穏やかな笑みを浮かべながら。
「つまり、あの口付けは“たった一度”だったと?」
「……え?」
玲陽から逃げながらも、涼景が硬直する。
「ということは、二度目はまだ空いている。……ならば、今ここでおまえと交わしても、問題はないということになる」
「いや、どうしてそうなる!? なんでそんな理論で俺がまた狙われるんだ!?」
「“俺というものがありながら”。……この言葉の意味を、おまえの浅い頭でも理解できるか?」
「わからん! ていうか、今まで俺とおまえ、そんな関係じゃなかったろ!? 口付けどころか、手だって握ってねえぞ!?」
「それが不満だったんだよぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!!」
蓮章の叫びとともに、ひらりと外套が舞い、勢いよく涼景に迫る。
「ちょ――おま――やめっ――ちょっと陽! 助け――うわあああ!! 両側から来るなあああああ!!」
中庭を縦横無尽に逃げ回る涼景。片や魂ごと口付けを回収しようとする玲陽、片や情念の塊を今こそ発火させんとする蓮章。
その喧騒を、廊下の端で静かに眺めていたのが、唯一の冷静人、東雨であった。
干し柿をかじりながら、小さく呟く。
「……こういうバカな大人にはなるまい」
まっすぐな目で、杯を持って逃げる涼景の背を見送る。
「絶対に」
言って、ちらりと後ろを見る。
「若様、隠れてていいんですか? あれ、完全に涼景様一人が悪者になってますけど」
廊下の柱に背を凭れた犀星が、薄く目を伏せて応じた。
「……あいつの過去の愚かさゆえだ。自業自得」
「でも若様も抵抗しなかったって」
「…………」
「だんまりですか!? ああ、これ完全に図星ってことですよね!? ってことは、やっぱり若様から――」
「喋るな」
「は、はい」
再び静寂。そこへ、逃げ場を失った涼景が、廊下へ飛び出してきた。
「星! どうにかしろ!!」
「涼景様、待ちなさい!! 口付けを返せええええ!!」
「その代わりに俺としろおおおおお!!」
「…………」
逃げながらすがる涼景を、犀星は一瞥する。
「……東雨」
「は、はい?」
「扉、閉めておけ」
「かしこまりました」
バタン。
そして庭から――
「いやああああああああああああああ!!!」
「覚悟ッ!」
「涼うううう!!」
「お前たちいい加減にしろおおおおおおお!!!」
地響きのような怒声とともに、締め切った板戸が、酒の香りとともにぴしりと鳴った。
――夜は、まだ更けてゆく。
誰ひとり、冷静にならないままに。
十年前の一度きりの口付けは、見事に未来をも巻き込み、災厄となって今を荒らした。
その口付けが、災厄の種であるならば。
――次に誰が奪うのか。
誰にも、予想などできはしなかった。
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こういうバカっぽいの、絶対本編じゃ書けないからなぁ(^_^;)
書いてて思ったけど、玲陽って、口付け一つで相手殺せるって……ある意味、最強?
怪物って言われてもしゃーない(^_^;)
(恵)
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