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第12話
アレから月日が流れ、少年の日課が少しばかり変わった気がした。
彼の睡眠が僅かだが長くなった気がする。
起きる時間は同じだったが、その目は起きているようで眠っているような感じがした。
虚ろんだ目がその日、一日中続く場合もあったし、二日程続く場合もあった。
眠い身体を起こし、何時もの日課を続けようとする彼の姿は痛々しかった。
ソレに連れて、僕は彼が何に囚われているのか知りたくなっていた。
興味本位で、飴玉を与えたこともあった。
薬だと言って、彼の口を開かせ、その口に放り込んで彼に食べさせた。
だが、彼はソレを舐めずに、ごくりと呑み込んでしまう。
薬だと言ったから、そうしたのだと最初は思っていたが、彼は咀嚼するとか、舐めると言う行為を知らないようだった。
薬だと言って、千切ったパンを彼の口の中に放り込んだら、彼は噛まずにごくんとその儘呑み込んでしまったから。
ソレから数日が経った、ある日。僕は眠たそうな彼にこう言った。
「眠いなら、寝て良いんですよ?」
と。
薬だと言って僕に向かって素直に口を開ける彼のことだから、僕の言うことなら聞くのではないのかと思って。
だから、僕は何でもない言葉を彼に掛けたつもりだった。
当たり障りのない言葉。
そう、当たり障りのないこと。
だが、そう思っていたのは僕だけだった。
彼はそう思っていなかったようだ。
僕の言葉にニッコリと笑って、「わかった」とそう言うだけだった。
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