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第一章 第13話 王都へ-2

「俺さ軽い考えで親父の呪いを解くには竜の秘宝あればいいんじゃないかと思ってここを飛び出したんだけど」  なんとエドガーは家出に近い形でこの王宮をでたらしい。そりゃ心配するよ。おそらく何でも屋のツッツファーレが足取りを伝えたりしてたんだろう。 「もっと気楽に考えてたんだ。腕を上げるために冒険者として魔物退治とかしてたからさ。いくつかダンジョンまわったら竜の秘宝もすぐに手に入るって思い込んでた。でも実際にはそんなに甘いもんじゃなかった。謎解きが必要だったんだ。それも封印を解くには3つの品が必要ってのであきらめかけた時にツッツファーレから情報もらってさ。異世界に飛んだんだ」 「こちらから異世界には一つの時代に一人しか飛べないのもご存じでしたか? そのために貴方の探索はできなかった」  コーネリアスが静かに話す。だがその話し方に怒気が含まれていて怖い。 「わ……悪かったよ。でもそこでアキトを見つけることが出来たんだ! 彼は魔女の末裔なんだ!」  エドガーが顔をあげてユリウスに目を合わせた。 「俺、親父が。父上が呪われて兄貴たちが後継者って事で苦しんでるのを見て何かしたかったんだ! だから迷惑かけて悪かった。俺ずっと何でもできる兄貴たちが羨ましかったんだ。出来の悪い弟でごめんよ」 「……何を言う。俺はお前のその行動力と自由さが羨ましいと思ってるのに」 「エド、私たちのせいでそんな風に思わせていたなんて申し訳ない」 「今まで心配かけてごめん」  うわ~。なんだよ。良い兄弟じゃん! お互いの事気にかけてたんじゃん! もう僕こういうドラマっぽいのに弱いんだよなあ。なんか感動して泣けてきちゃった。 「何を泣いてらっしゃるんですか? 」  コーネリアスが突然泣き出した僕に声をかけてきた。 「すみません。アキトはきっと兄弟仲がいいのに感動したのです」 「うん。クロードありがとう。でも僕には君がいてくれるから大丈夫だよ」   「アキトは濁りがないのだな。そんなのでよく生きてこれたな」 「ユリウス! その言い方は失礼です。その……アキトさんは純粋なかたなのですね」 「ふふふ。コーネリアス。私はアキトが気に入りました」 「だめだぞ! 兄貴達、アキトは俺のだ」 「いや、エドガー。僕は僕自身のものだよ?」 「あははははっ! それもそうだ。俺も気にいったぞ」  ユリウスが爆笑しだした。この人が後継者争いのために悪いことをする人には思えない。やはり何か裏がありそうだな。 「どうやらお二人の悪い癖が出だしたようですね。ユリウス様もラドゥ様もまったく。可愛い子を見るとすぐこれなんだから。話を戻しましょうか。さきほど竜の秘宝をみつけるために勇者と魔女と賢者の封印を解く品と言いましたね?」  コーネリアスが腕組みをしながらエドガーに問いかける。 「ああそうだ。うちが勇者の子孫でその資格を持ってるのは知ってるだろ? それに魔女のアキト。あと賢者を見つければ謎解きができるんじゃないか?」 「魔女の卵は生まれにくいと聞きますよ。すでに絶命種族に近いはずですがアキトさん貴方は本当に魔女なのですか? 」  コーネリアスは疑ってる素振りを見せてきた。アキトは急に話を振られて戸惑う。 「え? そうなの? 魔女って生まれにくいものなの?」  僕はクロードを振り返る。クロードは眉間にしわを寄せていたが僕の問いかけに答えてくれた。 「確かにそう言われてます。そのためアキトを育てた魔女はこの世界から彼を遠ざけました。卵だった彼を異世界に飛ばしたのです。正確には魔女の卵は産まれるが この世界では孵化しにくいのです」  「ええ? 僕って卵から生まれたの? じゃあ僕はこっちの世界で生まれたの? 」  まただ。僕の知らないことが多すぎる。なんだこの感覚。僕自身の事なのに。 「君は自分の事をよくわかってないみたいだね?」  コーネリアスがあきれた口調で聞く。だって本当の事だ。僕は魔女がどういうものかもわからない。 「アキトは箱入りなのです。彼を育てたブラッデイ・マリーは最後まで彼を大事に育てすぎたので」 「ブラッディ・マリーですか? あの強大な魔力をもってたという」  祖母ちゃんって有名人だったんだ? 知らなかった。じゃあ僕の身体に流れ込んできている魔力って祖母ちゃんの魔力? 日に日に大きくなってくるんだけど僕の魔力も強くなるのか? 僕の身体は持つんだろうか? 「面白い! 箱入りの魔女なんて聞いたことがないぞ!」 「兄貴っ!! アキトはだめだからな!」 「もうっユリウス様。エドガー殿をからかうのはいい加減になさいませ!」  

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