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第一章 第15話 *ハロウィンナイト**-1

 あれから僕らはユリウスさんやラドゥさんと別れてエドガーの自室に来ている。とにかく広い。この部屋にはテーブルとソファが置いてあり大きな窓とべランダがある。ベランダからバルコニーに出れるようになっていて、奥の扉は寝室につながってるらしい。  それにしてもラドゥさんが言ってたが今夜はハロウィンだって? この世界にもハロウィンがあるんだ?! 「この世界にも祝日やイベントの日ってあるの? 」 「ありますよ。意味合いも似てるものがあります」 「こちらの世界もハロウィンは精霊や魔物や死者の魂を呼び寄せるって言われてます。つまり一年の内一番魔力が集まりやすい日なのです」 「魔力が……」  そういえばなんだかさっきからドキドキする。身体中が熱い。クロードが素敵すぎるんだと思っていたがそれだけじゃない。目の前に座ってるエドガーにも目がいってしまう。……ってなんだ僕?   クロードも息が荒くなってきる? そういえばこの部屋には、やけに観葉植物が多い。  クロードが立ち上がろうとして膝からガクリとよろめいた。 「クロ! しっかりして!」 「どうした?」  エドガーが驚いてクロードを抱きかかえ、奥のベットに連れて行った。 「あれだ! エドガーその観葉植物! それとその香木っ! ベランダの風下に出して!」  何故早くに気づかなかったのだろう。マタタビに似た植物と幻想効果をもつ香木が部屋に置かれていた。クロードは猫科の獣人だ。それも少し前までは完全に黒猫として生きていたんだ。マタタビに酩酊してる可能性が高い!  「よしっ。クロード、大丈夫か? 動くなよ。寝てろ! じっとしてるんだぞ。アキト、他に変な植物はないか調べてくれ」  ひとつひとつ植物に手を当て効能を訪ねてみる。なんとほとんどが香木だと答えてきた。それも媚薬に幻想・エクスタシーを高める効能だという。なんだこれ!   「エドガー寝室もだ! さっきの植物と同じのがあるはずだ全部外に出せ」 「はあ。はあ。どうやら罠のようですね……」クロードが苦しそうだ。 「ああ! おそらくこの後寝込んだ僕らを犯すか酩酊してるところを狙う予定だったんだ!」 「エドガー。入り口に鍵をかけてください。はぁ。うぅ」 「わかった!ドア付近に家具を置いてバリケードを作る」 「アキト。施錠の呪文と……結界を。貴方ならやれます」 「僕が? わかった、やってみるよ。誰も朝まで入れなくする!」 「はあ。はあ。アキト……全部……外に出したぞ。なんだか身体が……熱い」  ヤバい。エドガーの息も荒い。香木の影響だろう。あれだけじかに触って動かしたんだ。近くで香りを吸ってしまったに違いない。 「はあ。……僕も身体が熱い。……熱くてなんだかぞわぞわするんだ。クロ……」  クロードに助けてほしい。そうだ。僕は抱いてほしいんだ。こんな状況でどうしよう。 「エドガー。お前魔力量は高いほうだと前に言っていたな?」 「ああ。ある程度の術は使える……何に使うんだ?」 「……アキトに使ってやってくれないか? わたしは今下半身がマヒしている」 「へ? なんだ? どういう意味だ?」  クロード何を言って? まさか? まさかクロード。 「今夜はこの世界にきて初めてのハロウィンだ。アキトの身体の中で魔力が活発化し暴れまくるだろう。だがまだアキトは覚醒してない。だから身体に馴染ませるには魔力の相性がいい相手の体液を取り込まないといけないんだ」 「た……体液を? それって……それ」  エドガーが顔を赤くして口をパクパクしている。 「クロっ! そんな! 僕はクロが……」 「アキト! それ以上は今は言わないで下さい。いいですか。これは治療です。それにエドガーの体液は貴方に馴染むはずです。貴方がエドガーに惹かれるのは魔力の相性がいいからなのです」 「そんな……クロは気づいてたの? 僕がエドガーが気になっているって」 「ええ。私はずっと貴方の事を見守っていますので」 「クロ。愛している」 「私もです。アキトを愛してます」  エドガーが、僕らの言葉に愕然として、目を見開いている。 「お前ら……」 「どうしますか? エドガー」 「くそ! 言われなくてもわかってるよ」 「エドガー。今も言ったようにアキトは貴方にも惹かれているんです」 「……それは嬉しい。でもお前らの様子を見る限りでは苦しいよ」 「エドガー。戸惑っているのはアキトのほうです。私は最初から貴方と共に彼の伴侶になろうと考えてましたよ。どうか私も込みで受け入れてやってはもらえないだろうか?」  あくまでもクロードは低姿勢で話しかけている。 「僕は……僕は……はあっ……くぅぅっ! 」 「アキト!」 「とにかく先に……ち……治療をしてやらねえと……」エドガーがクロードと目を合わせた。  黙ってクロードは目をつぶって頷いた。

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