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第一章 第19話 熱い想い-2
「アキト。もう気づかれてるのでしょう?」
「うん。……パートナー契約とは伴侶契約なんだね?」
「そうです」
「伴侶ってさ配偶者ってことだよね? 僕ら結婚しちゃったの?」
「はい。私は貴方を騙すようなズルいやり方で契約を結んだのです」
クロードが僕の前にひざまずき、うなだれる様に頭を下げ謝ってくる。
「どうして?……騙さなくてもよかったのに! なんではっきり言ってくれなかったのさ!」
「最初の夫になる必要があったからです! エドガーは王族です。彼が望めば嫌とは言えない状況になるでしょう。だからその前にどんな手を使ってでも貴方が欲しかった。長い間ずっと貴方だけを見てきたっ!」
「クロ……」
いつもの穏やかなクロードじゃない。こんなに感情的になった彼を見たことはない。
クロードに肩を掴まれ抱き込まれる。いきなりの事にあらがうが強く抱きしめられて身動きが取れない。
「アキト。私には貴方だけなのだ! なのに突然現れた奴に目の前でさらわれるなんて我慢できない! 魔女は淫蕩だ。この後もっとエドガーのような奴が現れる。わたしはいつか嫉妬にかられて貴方をこの手にかけてしまうかもしれない。だから発言権がある最初の夫になりたかったのです」
クロードにこんな部分があったなんて。そんなに僕の事を想ってくれてたの?嬉しい!
だけど、僕が欲しい言葉はそれじゃないよ。
「クロ……クロード。お前は勘違いをしてる」
僕こそクロードに惚れ込んでるのに。契約時に僕以外を抱けない様に呪いをかけてしまうほどに。
「アキト?」
「クロは僕の欲しい言葉をくれないのか? くれないのなら僕が言ってやる!」
「【お前の事を愛している。一生幸せにするから僕の傍に居ろ!】」
「アキト! ああ。私の伴侶はなんてカッコいいんだっ」
「クロは順番が逆なんだよ! プロポーズが先だろうが! バカ野郎!」
「幸せにするっ!一生傍にいる! 私と結婚してください」
「もうしてるじゃん。一人で思い悩むのはもう禁止だからな」
「嫌われるかと思ってました」
「そんなわけないじゃん。僕がクロにメロメロなのは知ってただろ? 」
僕はクロードに噛みつくようなキスをした。
「も~おいい~かい?」エドガーが拗ねた様子で現れた。
クロードが睨んでいる。まあ仕方ないかな? エドガーの部屋だしね。
「俺だって愛してるっ! わかってんだろ?」
「ごめんよエドガー。ありがとう」
「あ~ぁ! なんで俺はこんなモテる奴が好きになっちまったんだろう」
「僕はモテないよ。クロードとエドガーがおかしいんだよ」
「何言ってんだよ! 俺らだけじゃなく親父まで虜になっちまったじゃねえか」
あの後、王の足に触らせてもらって少し治癒魔法をかけてきた。
僕の治癒力については効果があったようで明日からしばらく、王の元へ治癒に通う事になった。
「心配だ! あのクソ親父っ。アキトに色目を使いやがって~」
「いやエドガーあの場ではきっと僕が色目を使ったと思われてると思うよ」
「……どちらも違うと思います。なんらかの別の力が働いてるように見えました」
クロードの尻尾はいまは僕の腕に絡みついている。尻尾は気持ちの現れというから僕の事がまだ心配なのだろう。嬉しいけどちょっと恥ずかしい。
「それって、僕の内にある魔女のちからというやつのせいなの?」
「多分。関りがあるのでしょう。それにマリアと尋ねられてましたね?」
「うん。祖母ちゃんのことかな? 僕の魔力は祖母ちゃんから譲られたものなんでしょ?」
「それもありますが、それ以上の力も流れ込んでる気がします」
「ん~、だが親父はアキトに会ったことがある様子だったぞ」
「あの時。懐かしい気がしたんだ。凄く会いたかった気がして……」
王様とキスをしたかったなんて事はエドガーの前では言えないや。
クロードに魔女は淫蕩と言われたた時、僕は反論が出来なかった……。
パートナー契約を結ぶと伴侶になる。伴侶って旦那さん。ん?僕は奥さんって事? この世界では結婚って概念がない。複数婚もOK。それも最初の夫が力を持つんだね。
クロードは契約があるから僕に嘘はつかないが……肝心なことを言わない。
聞けば教えてくれるんだろうが何を聞いたらいいのかがわかんないんだよな。
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