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第一章 第21話 魔女のハート-1 

 オスマンに連れられて部屋の奥へと足を進めると大きな扉が現れた。 「わあ。これはまた頑丈そうな扉だね。それも何年も開けてないみたい」  奥の部屋には取手のない分厚い扉があった。 「この扉は取手がなく、呪いがかかってるのではと言われて……」 僕はオスマンが全部言い終わるのを前に扉に書かれている文字を読んで引戸をあけた。 「な! 何故開け方がわかったのですか?」 「ここに書いてある文字、僕読めるんだ。あと前に住んでた家の開け方なんだよ。  ほら、ここに凹みがあるでしよ? ここに手をひっかけて横にスライドするの」 「異国の開け方なのか? それにその文字が読めるですと? 何故ですか?」 「んー。なんとなく。書いてあった文字はこうだよ。【君なら開け方がわかるだろう】って。ふざけてるよね」  笑いながら僕が中に入っていくと、オスマンは僕のあとを追うように部屋に入ってきた。  なぜだか懐かしい気配がして、僕は部屋を見渡すと「こんにちは」と挨拶をした。 「誰に挨拶をされてるのですか?」 「ん? なんとなくこの部屋に挨拶したくなったんだよ。今までココを守ってくれてありがとうって」  すると、僕の言葉に反応するように、ふあっと風が吹いた。 「窓がないのに。どこから風が?」オスマンがキョロキョロしている。 「僕、魔女のハートを探してるんだ。僕を魔女と認めてくれるなら場所を教えてくれる?」  何故そんな問いかけが僕の口から出たのかもわからない。だが、 目の前の台がキラリと光った。台には古ぼけた箱がひとつ乗っている。何か関連があるのかもしれない。 「今のはなんですか? 魔法ですか?」 「そうなのかな? よくわかんない。ねえこの箱開けてもいい?」 「気をつけてください」  オスマンは警戒していた。そりゃトラップかもしれないと普通なら思うよな。でも今回は違う気がする。まるで見つけてくれと言ってるようだった。 「わかった。じゃあ、まずは魔力を流してみるよ」  僕は箱に手をかざして開けてもいいかい?と小さく呟いた。  すると箱は自らゆっくりと開くと中から小さな宝石箱がでてきた。  オスマンは信じられないと目を大きく見開いていた。 「どう…して見つけられたのですか?」 「これがそうなのかな? ん~?ここはばあちやんの部屋の気配に似てるんだよ。だから僕の言葉に答えてくれる気がしたんだ」 「ばあちゃん? 魔女の部屋ですか」オスマンは急に黙りこくってしまった。 「アキト様。ここまでです。さあ、その箱をこちらにお返しください」  どういうことだ? さきほどまでの彼とは違う。 「最初からハートを僕に見つけ出させて奪うつもりだったの? 」 「どうやら貴方は危険なようです。やはりこの国に魔女は必要ないっ! 」  腰にさしてる剣をぬいてアキトに向けてきた。 「痛い目にあいたくなかったらそれをわたしに渡してください」 「いやだ! 渡さないっ。こういうやり方は嫌いだ!っ」ぼくはオスマンを突き飛ばした。  だが、彼はそのまま体勢を立て直し僕に向かって剣を一振りした。  シュパッ!! 「あうぅ! 」  オスマンの剣が僕の腕に軽くあたり血が流れる。そのはずみで宝石箱を手から離してしまう。  カランッと中から何かの塊が僕の足元に転がった。魔女のハートなのか? 「……本当に切るつもりはありませんでした。頼むからそれ以上抵抗しないで下さい」 「くっ……僕は君とケンカはしたくないよ。ラドゥさんが悲しむから」 「ラドゥ様の名前は出さないで下さい! 貴方に何がわかるのだ!」    ポタッポタッと腕を伝って僕の血が足元に落ちる。  その血が足元の塊の上に落ちた時……  『遅いじゃないかい!? 待ちくたびれたよ!』塊から声がした。  塊は真っ赤な色に染まりぐるぐる回りながらアキトの目の前まで迫ってきた。 「こ……これがハート? ええ!? なに? 」 『うるさいね。失くした欠片だよ。ほら、受け取りな!』 「ま……待って! ぐぅっ!」  ハートはそのままアキトの胸の中へ入っていった。まるで融合するように。 「だ……大丈夫か?!」様子を見ていたオスマンが思わず声をかけてきた。やはり悪い奴じゃないんだな。 「『あぁ、久しぶりだねえ人の身体は。さあて愛しい人に会いに行かないと』」 「アキト様? じゃないな!? お前は何者だ? 」 「『お前に名乗る必要はないね。ふん! 』」 「な?!……嘘だろ? 」  オスマンが顔をあげると目の前にいたアキトの姿はなかった。

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