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第一章 第34話 事の顛末-2

「クロ。僕しばらく考えてみたんだけど」 「何をですか?」 「クロは最初、僕をここへ連れてきたのは祖母ちゃん……ブラッディマリーの仕業じゃないかと言ってたけど」 「はい。私を黒猫の使い魔に変えたマリー様は奔放で破天荒でいて何より偉大な魔力を持たれていたのでそう思ったのですが」 「ふふ。確かに自由な人だった。でも僕がここに来たのはこちら側の世界から呼ばれたんじゃないかと思うんだ」 「この世界からですか?」 「うん。僕ここしばらくはいろんなことが起こりすぎて落ち着いて振り返れなかったんだけど、ここ数日は魔力が安定してきていてね。一晩寝たら前日の出来事が頭の中で整理されてるんだ。それで、以前城の柱で見つけた竜の文字を思い出したんだ」 「ああ。ありましたね。竜の文字」 「うん。その中の《咎人の秘めるる闇なる裡の記憶を暴くこと勿れ。災いの元となるであろう》ってさ、今回の事なのかな? って思ったの」 「ドリスタンの件ですか?」 「そう。《咎人の秘めるる闇なる裡の記憶を暴くこと勿れ》って過去に英雄と言われた王がした事を探り出すなって意味かな?って。ドリスタンはかつての王家との密約の手紙を見つけ自分をご落胤と思い込んだ。その密約が《秘めるる闇なる裡》なのかな?って」 「竜の文字は【予言だった】という事ですか?!」 「ん~。それに近いものなんじゃないかな?僕さ、この世界に移転された当初魔力が不安定で予知夢らしきものを見てたんだ」 「なんと?そうだったのですね?」 「うん。心配かけると思って言わなかったの。ごめんね。僕の中には魔女と王家と竜の血が流れている。その竜の影響だと感じたんだ」 「竜……ではアキトがココに移転されたのは」 「うん。竜が僕を呼んだんだと思う」  それから数日後、オスマンから謝罪をしたいと連絡が入った。 「嫌なら断ってもよろしいのですっ!無理に会う必要はございません!」  クロードが額に青筋を立てている。 「……ん。でも、ここで会わないといつまでもモヤモヤしたままだと思うんだ!」 「アキト。では私もついて行きます」 「うん。クロありがとう。傍にいて」  広間には王様。第一皇太子のユリウス。宰相コーネリアス。第二皇太子のラドゥ。  ラドゥの横にはオスマン。少し離れたところに第三皇太子のエドガーがいた。  王家の面々が見届け人ということで一同集まってくれた。  クロードはアキトの背後で射殺しそうな眼差しでいる。  エドガーも離れたところで剣に手をかけていた。  オスマンは少しやつれた顔でアキトの足元にひれ伏した。 「アキト様、この度は誠に申し訳ございませんでした。本来ならば斬首にも価するところを貴方様の恩情で助けられたと伺っております。今後はラドゥ様の側近として王家にこの身を捧げます」 「顔をあげてください。貴方はドリスタンに脅されただけなのでしょう?ご家族の事は伺いました」 「はい。そのことにつきましてもラドゥ様が取り持ってくださいました。家族も祖父も今は王家の元で庇護をうけられるようになりました」 「よかったですね」  ラドゥがすっとアキトの横に立った。 「アキト。君が二度と心を痛めない様に今から私はオスマンと契約をする」  そういうとその場でオスマンはラドゥに【いついかなる時も生涯の忠誠を誓う契約】をし、更に 「わたしラドゥは可愛い弟とその伴侶を守る事を誓う!」と宣言をした。 「ラドゥ……ラドゥ義兄様……ありがとうございます」 「わあ!やっと呼んでくれたね!アキト!」 「アキト。わたしからも一言いいかな?」  王がアキトに声をかけてきた。 「アキト。お前にはいろいろと迷惑をかけてしまった。本当にすまない。それに私はこんなに元気になった。もう治癒は必要ない。そろそろ自分の為にこれからの事を考えていきなさい」 「王様……」 「エドガー。こちらへ。伝える事があるのだろう?」エドガーがアキトの傍に歩いてきた。 「……アキト。俺さ、もっと自分を磨きたいんだ。だから本気で騎士団をまとめ上げていくよ。俺、竜騎士団の元へ行くよ。王位継承は放棄する!王宮にはしばらく戻らねえ!」 「わかった」 「あぁ。だからしばらくお別れ……」 「竜に会うの楽しみだなあ!クロも一緒でしょ?それに僕ね剣術教わりたいんだ~」 「え?おい……お前……????」 「何? 以前、僕も一緒に行くって言ったでしょ?!」 「ぁ……それはそうだが。俺といて嫌な思いとか……」 「何言ってんの!あのときはちょっと後遺症が残ってただけ!僕がエドガーを嫌がるわけないでしょ!」 「アキト……本当か?本当に?」 「当たり前じゃん!僕は伴侶を愛してるんだから!それともエドガー浮気しようとしたんじゃないよね?」 「まさか!俺にはアキトだけだ!」 「あはは。アキトに一本とられましたね? #エド__・__#」 「クロ……ドお前俺の事エドって」 「ええ。アキトの伴侶として貴方がわたしをクロと呼ぶのだからわたしもエドでよいでしょう?」 「おお!クロ!いいぞ!俺はエドでいい!アキトもそう呼んでくれ!」 「ふふ。なんだかわからないけど前よりもっと仲良くなったってことだね?」 「よし! 新たなステージへ踏み出すぞぉ」     1章完結。   ~~~~~~~~~~~~~~~~~ 参考:1章「城の秘密」より 「《炎のわだつみに鎮めるる亡霊の魂よ。永遠の死を弔うのは灼熱の業火のみ》」 「《我は何も必要とせずそれ故にすべてを求めているもの。復活は我の為でもあるのだから」 「《咎人の秘めるる闇なる裡の記憶を暴くこと勿れ。災いの元となるであろう》」 「《忘れるな。我々はこの地を見守っている。争いは破滅への序章》」  少しお休みして外伝のあと、  2章「竜騎士団編」へつづく

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