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-弓弦/イオリ-プロローグ

その銃声を聞いた瞬間、僕はすべてを悟っていた。 肌にまとわりつくような湿気と暑さの中、気高い意志のもと、御国のために戦う兵達。 命懸けで戦う人々がいる反面、音楽が救済になると信じていた、視野の狭い仲間たち。 そんな混沌の中で出会った、目の醒めるような強い衝動——恋。 その人のために僕がしてあげられることは一つだけだと確信していた。 けれど会った瞬間からその気持ちに確信を持っていたのは、目の前にいる人物こそが あの時代、あの場所で出会った『彼』が生まれ変わる前の姿だったからだろう。 バイオリンの音色に耳を傾ける優しい横顔を目にした時、直感した。 これから僕が辿っていく末路と、その先に待つ未来。 苦しくて、痛くて、辛い日々が僕を待ち受けていることだろう。 けれどその先の先、ずっと果てには、そんな過去を凌駕するほどの幸せが待っている。 僕はきっとまた彼と出会い、彼と生きる。 それは約束された運命だから。

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