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-ガク-ゆらぎ⑥
ガクは口元を抑え、えずきそうになった。
前世の俺は、なんと罪深いことをしたのだろう。
俺のわがままのせいで、弓弦を巻き込んでしまい、弓弦だけを死なせてしまったのに。
俺は凝りもせず、弓弦の生まれ変わりであるイオリとまた交流を持ちたいと考えている。
イオリにももし前世の記憶があったなら、
自分を死に追いやった相手となんか、もう関わり合いになりたくないと思ったかもしれない。
幸か不幸か、イオリにはその記憶がない。
でも、もし俺と同じ状態で再会していたら——
イオリから、二度と顔を合わせたくないと言われても仕方のないようなことを、前世の俺はしていたんだ。
ガクは顔を青ざめさせながらも、席を立つことはせず、その後も物語を追った。
兵士の一人が切腹した後も、物語は目まぐるしく展開して行った。
イギリス軍の中尉であり、日本語も話せるローレンスが、日本軍のハラ軍曹と交流する様子を軸に物語は進んでいく。
ローレンスは日本文化に理解を示しつつも、納得ができない考え方についてはハラと激しく口論を交わし、衝突しながらも友情を築いていく姿。
それと並行して、もう一組、物語の展開の中心を担う人物たちがいた。
ローレンス同様、イギリス軍の捕虜として収容されてきた少佐セリアズと、収容所の軍曹ヨノイ。
規律に忠実であり、それを乱そうとする捕虜を厳しく正そうとするヨノイと
仲間を思うがゆえにしばしば規律違反を繰り返すセリアズもまた相反する二人であった。
だがこの二人は、ローレンスとハラが確かな友情を築き上げていくのとは違い、
それとは異なる感情を互いに向け合うようになる。
ガクはいつの間にか、この二人の行動、視線、言葉に意識を持って行かれていた。
そして二人が辿った末路は、美しくも儚く——
それはまるで春木律人と秋庭弓弦の辿ったそれに、奇しくもどこか似ているように思えた。
館内の照明が付き、観客たちが次々と席を立っていく中、ガクはしばらくそこを動けずにいた。
自分の前世と重なる部分があったためだろうか、作品の持つ重厚感に圧倒されたのか、
映画が終わった後もずっと余韻が抜けない経験は初めてだった。
——イオリから腕をちょんとつつかれ、ガクはようやく現実に戻って来た。
「……終わったよ。映画」
「……あ……、うん」
ガクは慌てて立ち上がると、イオリも席を立ちながら言った。
「——難しい話だった」
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