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-ガク-コンサートマスター①

「平日がっつり稼げるバイト探そっかなぁ」 ガクは授業が終わった後、スマホで求人サイトを眺めながら、独り言を呟いた。 イオリと会いたいと思いつつ、土日のスケジュールがあまりにバイトで詰まっているため ガクは土曜か日曜のどちらかをバイトを入れない日にする代わりに、平日の稼働を増やそうと考え始めていた。 「なになに?仕事探し?」 ガクの独り言を聞きつけ、いつもつるんでいる友人の一人・悠真が肩を組んできた。 「今ってバイト何してるんだっけ?」 「平日はサークルない日に塾講師、土日は昼コンビニ、夜居酒屋」 「うわ、バイトの鬼!」 「でも土日のバイト減らして、平日もっと働こうかなって思ってる」 「え!?そしたらサークルどうすんのさ」 ああ、サークル…… 「……辞めよっかな。 部費と飲み代も嵩むし、サークル辞めれば平日五日間のフルで働けるようになるし」 「ええ〜!?ガク、サークル辞めんの!?」 話を聞きつけてやって来たのは、いつものメンバーで同じサークルにも所属している翔太。 「ガクが辞めたら皆ショック受けるって!」 「んー有難いけど、今は金を稼ぎつつ時間も作りたいと思ってるんだよね」 「……もしかして例の『イオリ』ちゃん?」 翔太は、少し前にガクがイオリからメッセージを受け取って歓喜していた時のことを持ち出した。 「つまりイオリちゃんとデートするために土日空けたいってことね」 「だから……、イオリは男だって言ってるじゃん」 「男からメッセもらってあんなに喜ぶものかよ? 俺たちの仲だろ、正直に言えよ、彼女だって」 「彼女じゃないってば」 「——じゃ、写真! そのイオリ氏の写真を見せてくれたら、悠真だって納得するよな? 渦中の人物がほんとに女じゃないかどうか!」 「それだわ。写真見して、写真!」 翔太と悠真が、わくわくとした視線をガクに向けてくる。 「……写真、持ってない……」 ガクが言うと、二人は揃って肩を落とした。 「ちぇー。いつか見せてくれよな」 「それよりサークルまじで辞めちゃうの?」 二人がそれぞれに話題をぶつけ、ガクは混乱しながらもスマホを開き直した。 「とにもかくにも良さげなバイトを見つけないと。 平日の夕方から入れるバイト、なんか知らない?」 「——何?バイト探してんの、ガク」 するとそこに、別の授業を取っていた仲間・駿が 授業を終えて三人の方へ合流し、そのままこんな提案をして来た。 「高校の後輩が今年受験生なんだけど、ウチを受けようとしてるらしくて。 ガク、後輩の家庭教師なんて興味ない?」

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